『トランスポーター イグニション』は新たな才能を発掘するか? ヨーロッパ・コープ映画の魅力と役割

『トランスポーター イグニション』の魅力

 いよいよ10月24日より公開が始まる『トランスポーター イグニション』。ジェイソン・ステイサムを一躍スターダムにのし上げた『トランスポーター』シリーズの実質リブート作であり、リュック・ベッソン率いるアクション映画シーンの雄「ヨーロッパ・コープ」映画の最新作だ。

 ベッソンと言えば、90年代『グラン・ブルー』『レオン』『ニキータ』などの傑作を生み出し、時代の寵児となった男だ。そんなベッソンが2001年に設立した映画スタジオがヨーロッパ・コープである。このヨーロッパ・コープが、年々アクション映画シーンで存在感を増してきている。

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 ヨーロッパ・コープのアクション映画は、基本的にベッソンが制作・脚本を担当し、監督は別の人間が担当するというスタイルになっている。この体制の下、多くの作品が生み出されたが、そのストーリーはすべて「圧倒的に強くてカッコいいヒーローが、同情の余地もない極悪人を叩きのめす」と要約できる。付け加えると、美女のセクシーなシーンと、ド派手なアクションもお約束だ。ヨーロッパ・コープのアクション映画は、基本的にこのスタンスを崩すことはない。ほとんど紋切型と言ってもいいだろう。

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 しかし、そんな量産を念頭に置いた体制だからこそ、監督や主演の手腕や、俳優の個性が問われるのだ。そういう意味では、往年のロジャー・コーマン映画のようでもある。コーマンは低予算のB級映画を量産した映画プロデューサーだが、彼の下からは多くの偉大な映画人が生まれた。フランシス・フォード・コッポラ(『地獄の黙示録』『ゴッドファーザー』)、ジェームズ・キャメロン(『タイタニック』『アバター』)などの一流映画人が、コーマンの下でキャリアをスタートさせたのは有名な話だ(劣悪な現場で凄まじく苦労したらしいが)。いわば、そこは映画人たちの修行の場だったのである。一部のファンはそんなコーマン体制のことを、「コーマン学校」とも呼ぶ。そしてヨーロッパ・コープも、いわば「ベッソン学校」なのだ。

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