人生は何度でもやり直せるーーインド舞台の『マリーゴールド・ホテル』続編が教えてくれること

『マリーゴールド・ホテル』続編レビュー

 人生は何度でもやり直せる。インドに宿る不思議なエネルギーと、マリーゴールド・ホテルを訪れる人々は、そんな希望を抱かせてくれる。私はインドに行ったことはないが、その活気あふれる空気感と、幻想的な映像美にうっとり飲み込まれてしまいそうになる。

 ハリウッド映画とボリウッド映画が融合したような、上品かつエネルギッシュな作品だ。ここに登場する人物のほとんどが、酸いも甘いもすでに多くを知り尽くした年齢であり、ともすると迫り来る命の終わりに悲観的になりそうなところだが、第二の青春をすっかり謳歌し、人生はいくつになっても楽しむことができると証明してくれる。風に運ばれた種が、行きつく場所に行きついて花を咲かせるように、時は進んでいく。もしそんな工程になっているのなら、焦らず騒がず、今をゆっくりじっくり楽しみたい。そんな助言が、今という時を楽しむ彼らから、じわじわと伝わって来るようだ。旅と人生が交錯し、華やかで豊潤な時が、忘れた頃に再び訪れる。 

 この映画は世界各国でスーパーヒットを記録した『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』の第二章である。ただ、たとえ第一章を見逃しても、十分楽しめる内容なので心配ない。ここは若き支配人が経営する長期滞在型ホテル、マリーゴールド・ホテルだ。ただお世辞にもいいホテルとは言えない。若き支配人デヴ・パテル演じるソニー・カプーは経営、事業拡大、自らの結婚に悩み、もがく日々を送っている。そこに第二のスタートを求めるかのように、イギリスからやってきた人たちが滞在する。彼らは皆、肉体は老いているかもしれないけれど、精神は決して老いていない。歳を取ると人は頑固になるし、素直に物事を受け入れにくくなる。でもここに来る人たちは、私はもう歳だからと誰も悲嘆してはいないし、すべてをシャットアウトしたりもしない。自然に身をゆだねている。

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 そこには自分の才能を生かせるビジネスチャンスを手に入れたり、ホテルの共同マネージャーとして活躍したり、恋愛に心躍らせたり、またそれに思い悩んだりと、これまでの彼らの道にはなかった、別の新たな自分を楽しんでいる人たちがいる。そう、確かに自分の輝きを手に入れる瞬間はもう訪れないのかもしれないと思っても、新たな場所や人との出会いで、予想だにしないことが起こる可能性は十分にあり得る。

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