松本潤主演『99.9』と『リーガルハイ』『HERO』の共通項ーー弁護士と検察の関係をどう描く?

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(C)タナカケンイチ

 『99.9 刑事専門弁護士』で、初めて前後編分けとなった今回のエピソード。前編に当たる第5話では、依頼人(千葉雄大)が起こした傷害事件と、その発端となる、彼の父親が殺害された18年前の事件について調べていく。その結果、傷害事件の被害者・三枝(平田満)こそが、18年前に依頼人の父親を殺した犯人だと判るのだが、三枝は同じ日の同じ時刻に、まったく別の場所で起きた殺人事件の証人となっていたのだ。(参考:松本潤主演『99.9』、シリーズ初の前後編に キャラクターを深堀りした「前話」を振り返る

 先週放送された第6話では、その殺人事件をメインに扱っていた。経済界の大物の娘が殺害された事件であり、検察がメンツに賭けて事件の解決を急いだがために起きた、あらゆる悲劇をカバーしている。どこからか連れてきた三枝を目撃者に仕立て上げ、被害者の恋人であった青年(菅谷哲也)を冤罪へと引きずりこんだ結果、その青年は獄中死を遂げてしまう。しかも、当時その事件を担当していたのが、佐田(香川照之)であった。佐田はあまりにも鮮明すぎる三枝の供述に疑問を感じ、再捜査を申し出るが、主任検事だった十条(中丸新将)に聞き入れてさえもらえず、それがきっかけで検事を辞めることになったというのだ。

 弁護士と検察は常に対称の立場に位置している。これまでの司法ドラマの系譜を辿っても、今作と同じように弁護士が主人公となる『リーガルハイ』では松平健演じる冷気が漂ったベテラン検事・醍醐が、堺雅人演じる無敗の弁護士・古美門に初めて法廷で土をつけ、その後上告審で再び戦うまで古美門にPTSDを発症させるほど明確な敵対関係を築いた。逆に検察側が主人公となった『HERO』では、久利生公平(木村拓哉)と大学の同期だった飯島直子演じる巽江理子をはじめ、劇場版の松本幸四郎など、こちらも弁護士と検察が敵対関係を持ってぶつかり合う。

 それでも、両者とも法律家としてアプローチの仕方は異なるが、「真実」と向き合う立場であるということは共通している。まさに表裏一体の関係性であるということだ。この『99.9刑事専門弁護士』でも、主人公たち弁護士と敵対する検察の思惑というのが、今後ますます重要なポジションを占めていくことになるのだろう。中でも第1話から登場している、青木崇高演じる丸川という若い検察官の存在は、ひとつの鍵となるキャラクターであることは間違いなさそうだ。

 第5話で奥田瑛二演じる検事正・大友に呼ばれて会食に出向いた丸川は、18年前の殺人事件の再審請求のもみ消しを任される。これまで何度も検察がもみ消してきた事件と向き合うことになった丸川は、当時の捜査資料を読み漁っていくうちに、自分が行おうとしている不正の重大さに気付くのである。今回の第6話では、当時の担当検事が佐田であったことを知るのだが、その直後に偶然にも検察庁を訪れていた佐田と廊下ですれ違う場面が登場する。

 このとき、真っ先に避けて通る佐田に、丸川は何か話かけようとする素振りを見せるのだ。18年前の事件がきっかけで検察を辞めた佐田と、現在時で上層部の思惑に疑問を抱き始める丸山は、どことなく共通する部分があると感じることができよう。おそらく丸山は主人公たち弁護士の敵ではない。共に「真実」を追い求める法律家として、ドラマの行く末を大きく左右する存在であるのだ。

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