松本潤主演『99.9』、殺人犯に仕立てられた主人公はどう戦う? 『金田一少年』に通じる要素も

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(C)タナカケンイチ

 残り2回となった『99.9 刑事専門弁護士』(TBS系)。主人公・深山大翔(松本潤)が殺人罪で逮捕されるという衝撃的な第7話のエンディングから、第8話は結束した斑目法律事務所全体が深山の弁護に注力するという予測は的中したが、そのままクライマックスに流れ込むことはなかった。

 ここでふと、主人公が殺人犯に仕立て上げられてしまうというプロットから、ドラマシリーズ化もされた人気漫画『金田一少年の事件簿』を思い出した。松本潤が主人公・金田一一を演じた第3シリーズでは同様のテーマは描かれなかったが、初代の堂本剛が演じた第2シリーズでは『金田一少年の殺人』、4代目の山田涼介が演じた第4シリーズのNでは『金田一少年の決死行』と、二度に渡り主人公は殺人犯として追われることになるのである。両方ともドラマでは中間のエピソードであったが、後者は原作マンガではCaseシリーズの最後のエピソードとしての位置であった。

 そう考えると、物語のフィナーレには相応しいテーマになると思うのだが、その選択をしないのがこの『99.9 刑事専門弁護士』の読めないところだ。これまでたくさんの伏線を残しながら、一切明かされてこなかった深山大翔の過去について、斑目法律事務所のチームが調べ上げていきながら、徐々に紐解かれるというのも自然な流れだと思ったが、あくまでも深山の父親が無実の罪で逮捕され、公訴中に死亡してしまったということが明かされるに留まった。

 前述した『金田一少年の事件簿』の2つのエピソードでは、主人公は逃亡しながら事実と真犯人を探し始める。ところが深山大翔は逃げ出さない。探偵と弁護士という大きな違いがあるとはいえ、自分が逮捕されているという事実を巧みに利用するのだ。検察官から情報を聞き出し、それを接見に訪れた佐田(香川照之)や立花(榮倉奈々)に調査させることによって、是が非でも真実に辿り着こうとする。たしかにこちらの方が、ドラマチック過ぎずに現実的な流れに見える。

 不起訴にしようとする佐田に対して、それでは事件関係者として情報を得られないからと起訴されることを望む深山。有罪率99.9%の残り0.1%を、自分の弁護士生命を賭けてまで解き明かそうとする大ギャンブルに打って出るのだ。そして冷静かつ正攻法で対処する姿によって、“弁護士”という存在の意味を生み出すことになった。

 いとこの坂東(池田貴史)と、加奈子(岸井ゆきの)が面会に訪れる場面で、加奈子は仕切りのアクリル板に顔と手を密着させ、それによって付着した皮脂の汚れを、深山は拭くように言う。結局拭くものがなく、そのままになった汚れを、次に入ってきた佐田はそれを拭いながら、「こっち側の窓も拭けないやつを早期釈放するのが俺の仕事だ」と言い放つ。つまりは、佐田の持論である「依頼人の利益」ということだ。

 幾度となく、佐田の言う「依頼人の利益」と深山の「0.1%の事実を追求する」がぶつかってきたこのドラマだが、第7話で佐田が「事実を追求することが依頼人の利益となる場合もある」と発言したように、その両方の持論の折衷案というか、両方を尊重したスタンスに流れつつある。

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