黒島結菜、泣き笑いの演技で飛躍へーー『時をかける少女』最終話の名シーンを振り返る

 先週末の8月6日、他の夏ドラマよりも一足早く終わりを迎えた『時をかける少女』。全5話という短い話数ながら、黒島結菜、菊池風磨(Sexy Zone)、竹内涼真、吉本実憂などのフレッシュな役者たちが好演し、その初々しい姿も含め、夏にぴったりの青春ドラマとして見事なクライマックスを迎えた。

 若手俳優陣の中でも最も光る存在感を見せていたのは、やはり主人公の芳山未羽役を演じた黒島結菜であろう。当初は過去のヒロイン役との比較で賛否両論の声が上がっていたが、主人公の名前や設定をあえて変えた制作者の意図を汲みとると、完全に新たな作品として生まれ変わった本作に、彼女がフレッシュな息吹を吹き込んでいたことが浮かび上がってくる。

 黒島が演じた芳山美羽は、さっぱりとしたボーイッシュな性格で、親友の深町と吾朗の男子二人組に囲まれて青春を謳歌しているキャラクターだ。黒島は映画『ストレイヤーズ・クロニクル』や『at Home アットホーム』で影のある役を演じていたが、もともと清涼感や純真無垢なイメージを備えている黒島にとって、美羽のようなキャラはハマっていた。その上、海や木々が取り囲む自然豊かな静岡の街並みや、強い日差しが照りつける夏の模様が、より黒島のハツラツとした魅力を引き立てていた。自然までも味方につけてしまうのは、さすが夏らしい爽やかさが求められる“カルピスガール”に選ばれた逸材なだけある。

 そんな純真なイメージを持たれる一方で、前ドラマクールの『ナイトヒーロー NAOTO』では、主人公を言葉や暴力で攻めるドSなヒロイン役を演じており、そのせいか今回の男勝りな言動や振る舞いも違和感なく受け止めることができた。さらに、作品に散りばめられたコミカルな演出を難なくこなせたのも、コメディの鬼才・福田雄一が監督した青春ドラマ『アオイホノオ』で培った経験が活かされたためだろう。“等身大の演技”である一方、少しオーバー気味にも感じた菊池風磨のテンション高めな演技も、黒島はうまく受け止めていた。つまり、その整ったビジュアルや世間的なイメージだけでなく、黒島が持つ女優としてのポテンシャルの高さが、視聴者の心を掴んでいたのは確かだ。

 中でも、特に目を引いたのが、最終話で見せた深町翔平(菊池風磨)との別れのシーンだろう。それまでは王道の青春ラブコメ路線を進んでいた本作が、お好み焼き屋の店主・三浦浩(高橋克実)の願いをきっかけに、深みのある人間ドラマへと変化した最終回。未来人が現代で長生きできないことを知った未羽は、深町に対する気持ちを抑えながら、彼を未来へ帰そうと説得する。それまではずっと強く明るく振舞ってきた彼女が、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくりながら、タイムリープによって失われた深町との思い出をひとつひとつ大切に語っていく。そして、最後に泣き笑いの表情で「大好きだよ」と深町を見送る場面には、感情を揺さぶられた視聴者も少なくないのでは。SNS上でも「名場面」と注目を集めたこのシーンは、黒島の実力を垣間見ることができた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる