ピエール瀧、俳優業で引っ張りだこの理由 共演者のリズム崩す演技の面白さ

 テクノバンド“電気グルーヴ”のメンバーでありながら、現在放送中の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の宗吉、WOWOWドラマ『きんぴか』の軍曹、映画『日本で一番悪い奴ら』の村井など、2016年も俳優業が絶好調のピエール瀧。以前からその存在感は注目されており、短い時間の出演ながらも、必ず視聴者に強いインパクトを与えるそのキャラクターは、映像界においては唯一無二の存在として強い個性を発揮していたが、近年は演じる役どころも重要度を増している。今や映画やドラマに引っ張りだこのピエールの魅力に迫る。

 映画やドラマの出演作は枚挙にいとまがないピエールだが、近年、俳優として最もその存在感を強く世に知らしめたのは、2013年に公開された映画『凶悪』ではないだろうか。ピエールが演じた収監中の死刑囚・須藤純次は、リリー・フランキー演じる“先生”と呼ばれる不動産ブローカーに利用され、多くの殺人に手を染める凶悪犯。冷酷に人を殺す一方で、お人好しでまっすぐな人間味溢れる一面もキャラクターに落とし込み、第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞をはじめ、多くの賞を受賞した。

 電気グルーヴのピエールを知る人なら、彼の魅力の一つが破天荒なキャラクターであることは周知の事実で、内に秘める狂気性が前面に押し出された須藤という人物は“ハマるのでは”と想像できただろう。実際、ピエール演じた須藤はスクリーン上で恐ろしいほどに存在感を発揮し、不気味さと快楽的な表情は作品に大きな爪痕を残した。

 一方で、その柔和な風貌から、のんびりとしたお父さん役や、仕事はできないが周囲から愛される中年サラリーマン役などを演じることも多く“心優しい”というパブリックイメージをピエールに対して持っている人も多いだろう。『凶悪』でメガホンをとった白石和彌監督も「顔が怖そうなのに“いいおじさん”って思われているので、本性を出してもらうかなと思った」と起用理由を語っていた。

 上記のように、俳優としてのレンジの広さ——。このことが非常に多くの作品でピエールが起用される大きな理由の一つだろう。現在放送中の『とと姉ちゃん』では、武骨で口が悪いが、家族思いで面倒見がいいキッチン森田屋の店主・宗吉という、両方のピエールのキャラクターの魅力を詰め込んだような役柄で好評を得ている。

 また、ピエールと現場を共にした人間が、彼を評するときに使う共通するキーワードが“独特の存在感”だ。俳優の持つ存在感とは明らかに違うものがあるのだという。もちろん、ピエールは数々の作品に出演しており、俳優としての間やメソッドは会得している。しかし、そんな調和をいい意味で崩すような個性が、演じるキャラクターの中から垣間見える。

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