『A LIFE』菜々緒、“共感できる悪女”で新境地へ その多面的な演技を読む

菜々緒、悪女の新境地

 菜々緒扮する榊原実梨が、深冬の重病を会議の場で暴露し、浅野忠信扮する壇上壮大の責任問題を訴えるという波乱の展開で幕を閉じた『A LIFE~愛しき人~』第7話。

  「手に入らないのならばいっそのことは無くしてしまえばいい」という考えを持つ壮大は、壇上記念病院を桜塚中央病院の傘下に入れることを企て、さらには小児外科を潰そうと病院改革を推進し続ける。ワンマンプレイで計画を進める壮大の暴走には、周囲の人間も不信感や戸惑いを募らせ、とうとう親友の羽村圭吾(及川光博)にも「ついていけない」と見放されてしまう。その一方で沖田一光(木村拓哉)は、深冬の治療方法を思いつき、彼女との絆をより一層深めていく。物語は折り返し地点を越え、大きな展開を見せていく。

 壮大は、ここまでどうしようもないほど非道な男として描かれているが、彼の不品行を際立たせているのが、菜々緒や及川光博らが演じるサブキャラクターたちだろう。特に、壮大が実梨に冷酷な態度をとる第6話では、菜々緒が“不憫な悪女役”を見事に演じきり話題を集めていた。放送が進むにつれて株を落としていく壮大は、ここで一気に女性視聴者の支持を失ったのではないか。

 菜々緒にとってクールな悪女役はおなじみだが、『A LIFE』で演じている榊原実梨は、これまで以上に人間味を持つキャラクターだと言える。『ファースト・クラス』や『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』の悪女役は、キャラのインパクトで勝負していた部分が大きく、どんどん過激に演出されていたのに対し、本作ではじわりじわりとキャラの性格が滲み出てくるように演じている。視聴者の感想も、いつもの「〜役の菜々緒が怖すぎる」という言葉ではなく、「かわいそう」「幸せになってほしい」といった共感の声へと変化している。

 昨日放送された第7話の冒頭では、第6話で壮大との関係を絶ち、顧問弁護士を外されたはずの実梨が、何事もなく現場復帰する模様が描かれた。壮大と実梨の会話からは、ふたりが再び元の関係に戻ったと想像できるが真相はわからない。また、深冬が重病を患っていることを知っていると告白し、壮大の気持ちの所在を問いただすシーンも映し出された。普段は感情を表に出さず、平坦な声で会話をする実梨だが、壮大と会話をするときだけは感情が声に表れる。第6話で「どうして愛してくれなかったの…」と泣き崩れた実梨。ここでの問いかけにも彼女の悲痛と必死さが表れていたように思う。

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