阿部サダヲ、『直虎』徳川家康役で好評価の理由 少年時代演じきる怪優ぶりも

 現在放送中のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』。柴咲コウ演じる井伊直虎、三浦春馬扮する井伊直親、そして高橋一生が務める小野政次の幼なじみの微妙な関係が現在、物語の中心となっているが、そんな中、阿部サダヲ演じる松平元康(後の徳川家康)が大きな話題になっている。

 日本の歴史の中で、最も著名な人物の一人と言っても過言ではない徳川家康。当然のことながら、これまでの大河ドラマでも、 寺尾聰(軍師官兵衛)、北大路欣也(江〜姫たちの戦国〜)、松方弘樹(天地人)、西田敏行(功名が辻)、津川雅彦(葵 徳川三代)など数々の俳優が家康を演じてきた。一番近いところで言えば、昨年放送の『真田丸』で内野聖陽が、これまでの「神君」家康像を、コミカルかつ庶民的な人物という土台を提示しながら、年齢と共に変わりゆく姿を好演し、話題を呼んだ。

 徳川家康という人物は、幼少期から織田、今川という大名の人質として過ごすなど、決して順風満帆な人生ではなかった。現在9話まで放送中の『おんな城主 直虎』では、今川の人質時代から、桶狭間の戦いを経て、古巣である岡崎城に「戻れてしまった」というところまで描かれている。今川義元・氏真親子から一目置かれてはいるものの、立場は人質。現時点では“うつけ”まではいかないものの、何を考えているか分からない、ある意味無能にも見える存在だが、そんな元康を阿部は、非常にチャーミングに演じている。

 阿部といえば、劇団「大人計画」の看板俳優として、キレキレの演技をみせると共に、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』や『天国に一番近い男 教師編』、『木更津キャッツアイ』などでも強烈な存在感を発揮し、超個性派俳優として地位を確立。近年ではそのアクを内在しつつ、ドラマ『マルモのおきて』や『心がポキッとね』、映画『奇跡のリンゴ』など、人をホッとさせる温かい面も表現する俳優として、老若男女、幅広い層から支持を受けている。

 本作でも、こうした阿部の個性が非常に効果的に活きている。幼少期の竹千代と名乗っていた時代は12〜13歳という設定であったにも関わらず、子役を使わず阿部がそのまま出演したが、少年ならではの無邪気な表情や立ち振る舞いに違和感はなく、そのまま見れてしまうのは、ある意味、超個性派ならではの“怪演”といえるだろう。

 また、菜々緒演じる瀬名の視点から描写される元康が、なんともいえないほど可愛らしい。群雄割拠の戦国の世が描かれているなか、瀬名の尻に敷かれる元康が癒しになっている。こうした雰囲気も阿部の持つ、人をホッとさせる演技からくるのだろう。

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