吉瀬美智子、多彩な役柄で完全復活へーー『ブランケット・キャッツ』色気を封印した演技

吉瀬美智子、多彩な役柄で完全復活へ

 2016年10月に次女を出産し、以前と変わらぬスタイルで産休から芸能界に復帰を果たした吉瀬美智子。1年3ヶ月ぶりの作品参加となったドラマ『ブランケット・キャッツ』(NHK)が先週から放送開始され、まったくブランクを感じさせない美貌と演技を見せていた。7月からは大人の女優たちが競演するドラマ『セシルのもくろみ』(フジテレビ系)を控えるなど、復帰してすぐのフルスロットルな活躍ぶりに完全復活を予感させる。そんな吉瀬の経歴を振り返りつつ、彼女の魅力について考察したい。

 吉瀬と言えば、その上品な容姿から、知的で、清潔感があり、色っぽく、素敵な大人の女性という印象だ。遅咲きながらも自分を貫いて生きる彼女の姿に、多くの女性から共感を得ている。雑誌モデルやを情報番組『噂の!東京マガジン』(TBS系)5代目アシスタントなどマルチな活躍を経て、2007年に「32歳新人女優」として本格的に女優業へ転身。

 そんな吉瀬が女優としてのターニングポイントとなったのが、2010年にドラマ単独初主演を務めた『ハガネの女』(テレビ朝日系)だろう。当時のインタビューで吉瀬は「リアルな感情を表現するお芝居に挑戦したいと思っていた時期にちょうどこの役を頂いて嬉しかったです」(BUAISOインタビューより)と語っている。これまではクールビューティな印象が強かった彼女だが、ほぼスッピンで挑んだこの役は、人間臭い等身大の人物も演じられることを証明した。自身のエッセイ『幸転力』から読み取れる、ポジティブで、負けず嫌いで、引きずらないといった、実は男気あふれる吉瀬の性格が色濃く出た作品と言える。

 2013年7月に38歳で第1子を出産し、1年後の初復帰作がドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』だ。昼顔不倫に溺れるセレブ妻を熱演。同世代の女優にはない色っぽいクールさを持つ吉瀬は、ドロドロな展開になってもなお美しい。社会現象にまで及んだ同ドラマで吉瀬は、女優としてさらなる飛躍を遂げた。

 そして今回、2度目の産休を経て出演したのが『ブランケット・キャッツ』。 家具の修理店を営む西島秀俊演じる椎名秀亮は、交通事故で亡くなった妻が残した七匹の猫たちの世話をしながら新しい飼い主を探している。そんな猫を譲って欲しいと訪れる人たちにはそれぞれ家庭の事情があり、猫と短期間だけ過ごす人たちが悩みからの救いを求めるという物語だ。吉瀬演じる藤村美咲は、妻を亡くした秀亮を気にかけている幼馴染で、藤村動物病院を経営する獣医師なのだが、優しくコミカルな演技が実に素晴らしいのである。

 一見、西島が猫と戯れて可愛いハートウォーミングなドラマに見えるが、初回は認知症の祖母と家族の話が軸となり、現代社会で避けては通れないシリアスでシビアなストーリーだった。そんな中、動物病院の美咲と水島楓(島崎遥香)は秀亮の行動を見守り、物語を和ませる役割を担っている。秀亮のことが気になって仕方ないという美咲だが、吉瀬の演技がサッパリかつ良い具合に気が抜けているため、嫌な感じを一切漂わせない。どこまでも爽やかなのだ。NHKのドラマだけに丁寧に作られており、その結果、吉瀬の魅力が引き出されているというのももちろんあるだろう。だがそれだけでなく、産休を経た吉瀬はどこか余裕があり、安定した演技に進化を遂げた印象だ。

 吉瀬が「色気とかは100%封印しています」とトークショーで話していた通り、いい大人なのに恋愛には奥手な独身女性という役柄がぴたりとハマっている。今までの吉瀬にはなかった可愛らしい新たな一面が垣間見えるのだ。それを思うと『昼顔』とはまた違う形で復活できたのは女優として正解だったように思われる。

 しかし7月から始まるドラマ『セシルのもくろみ』は、雑誌モデル業界というギスギスとした強い女性の世界をテーマにした物語で、真木よう子、伊藤歩、板谷由夏、長谷川京子といった女優として一から這い上がって来た濃い面々が、内容と共に演技バトルを繰り広げる。吉瀬の役は、雑誌「ヴァニティ」のカバーモデルで、全てを兼ね備えたパーフェクトな女性だ。32歳でモデル業界を去り、女優としてスタートさせたこの10年間は、見方を変えると、モデルのイメージを消すために女優として戦ってきた10年間と言っても過言ではない。そんな吉瀬が産休開けの女優生活10年目で、奇しくも雑誌モデルの役柄を演じるとは運命のイタズラだ。

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