吉岡里帆、悪女から正統派ヒロインへーー『ごめん、愛してる』愛情深い役で新境地

 2017年上半期にブレイクした女優のひとりとして今、人気絶頂の吉岡里帆。ただいま放送中のTBS日曜劇場『ごめん、愛してる』ではヒロインの三田凛華役に抜擢された。ブレイクのきっかけとなった『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)の肉食系女子役や、『カルテット』(TBS系)の悪女役など、エキセントリックな脇役が多かっただけに、今回の王道ドラマでの正統派ヒロイン役は女優としての真価が問われる。『ごめん、愛してる』で演じている純粋で愛情深い役にみる、吉岡の新たな魅力について考察してみたい。

(c)TBS

 『ごめん、愛してる』は、韓国で『冬のソナタ』を越える視聴率を獲得した大ヒットドラマを、2017年の日本に舞台を置き換えてリメイクしたラブストーリー。TOKIOの長瀬智也が日曜劇場で初主演を務めるなど今夏話題のドラマだ。運命に導かれる恋愛、出生の秘密が隠された血縁関係、銃で撃たれ余命いくばくもない命、心臓病の弟、裏社会のマフィアなど、韓国ドラマのリメイクらしく、とてもベタなキーワードが満載の内容となっている。

 歴史あるドラマ枠なだけに注目も大きい。また原作が人気ドラマだけに当然比較されてしまう。吉岡は『カルテット』で、周りをかき回す悪女役でその素質を開花させたが、今回は「自己犠牲をいとわない純粋で愛情深いヒロイン」という真逆の役柄。なおかつ、受け止める側の演技をしなければいけない。正統派ヒロインと言えば、周りの声を聞かなかったり、危険をかえりみず行動したりと、いい意味でも悪い意味でもとにかく真っ直ぐな女の子という印象がある。そのため、視聴者をイラっとさせることも少なくない。だからこそ、いかに視聴者を納得させる演技ができるかが重要になってくる。

 Ameba Official Pressのインタビューで吉岡は「今までやってきたトリッキーな役柄たちは、キャラクター性として私の背中を押してくれていたんですけど、凜華は役としての突発的な特徴はなくて、そういった部分を見せる役でもないんです。凜華を演じるときは、もっと人間の内側にある、心の動きとか、細かい部分を見せたいなって。なので、こういうキャラ! と決めつけないようにして演じています」(引用:吉岡里帆インタビュー "ブレイク女優NO.1"は「自分には似合わないワード」)と役に対して冷静に分析し、今までとは違うアプローチをしていることを明かしていた。

 さらに「その子のダメな部分を出していきたいなと思うんです。凜華の場合だと、不器用で素直になりきれなくて、影ながらでしかできない…そんな情けなくて弱いところ。視聴者から見ても、人間くさいなと思ってもらえるようなキャラクターでありたいなと」と、視聴者に何を見せたいのかを明確にしている。そのため、ベタなドラマの中で吉岡は、キッチリと自分の演技を見せてくれているのだ。この2つの発言からは、彼女が女優としてブレイクした理由が伺える。

 また共演者に、ヒステリックな母親役の大竹しのぶや、7歳の知能しかない一児の母役の池脇千鶴ら、実力派の曲者女優が並ぶ。さらに、『カルテット』(TBS系)出演時の吉岡のように、お茶の間にまだ浸透していない分、ミステリアスである大西礼芳は、登場人物たちをかき回していく役割だ。そんな濃いキャラクターが勢揃いする中で、ヒロインとして存在価値をいかに見出せるかも重要になってくる。

 3話を終えたところで吉岡は、自然で一途な役柄を違和感なく演じている印象だ。周りが濃いからこそ、自然に見えるという部分もあるが、メロドラマのベタなヒロインとしての演技もキッチリとこなしている。プレイボーイのインタビューで「私の役は特に、ほかの登場人物の感情がリンクしていく存在だと思うんです。だから『彼ら、彼女らはこのときどう思うんだろう』って、場面ごとに想像力を働かせながら演じるようにしています」(引用:『ごめん、愛してる』も話題! 最も勢いのある女優・吉岡里帆「ブレイクしたと思うことは死ぬまでありません」)と答えており、ヒロインだけど相手の感情を引き立たせるなど、今まで培ってきたバイプレイヤー的なポジションもこなしているのが、吉岡ならではの強みではないだろうか。

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