映画、演奏者、観客が一体となるカタルシス 『ラ・ラ・ランド in コンサート』体験レポ

『ラ・ラ・ランド』シネマコンサートレポ

 『ラ・ラ・ランド』の興奮と熱狂が再び! 今年2月に日本公開され、多くの人々が文字通り「恋に落ちた」極上のミュージカル・エンターテインメント映画『ラ・ラ・ランド』が、巨大スクリーンでの上映&オーケストラの生演奏による『ラ・ラ・ランド in コンサート』となって、現在日本を席巻中である。

 映画のセリフや効果音はそのままに、劇中に流れる音楽をフルオーケストラが演奏する「シネマ・コンサート(シネオケ(R))」スタイルでの上演。それは、ヨーロッパやアメリカで人気を博し、日本でも過去、『ゴッドファーザー』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『E.T.』、『インディ・ジョーズ』、『ハリー・ポッター』シリーズなどの名作が上演され、公演を重ねるごとにファンを増やしている人気企画であるという。

 今回、その指揮を担当するのは、海外で300以上もの「シネマ・コンサート」でタクトを振ってきた、その道の第一人者、エリック・オクスナー。演奏を担当するのは、日本でも有数の存在として知られている東京フィルハーモニー交響楽団だ。その内容とは、果たしてどんなものなのだろうか。9月29日(金)、パシフィコ横浜 国立大ホール公演を観に行ってきた。

 みなとみらい地区の一角にあるパシフィコ横浜、収容人数約5000名の大ホール。チケットは完売。そのロケーションも関係しているのか、カップルはもちろん、老若男女さまざまな人々が見受けられた観客の装いは、いずれもどこか華やかな印象だ。とはいえ、ロビーに設置された物販ブースと、例の「ラ・ラ・ランド」ポーズがキメられるフォトブースは、開場から間もなくして、早くも長蛇の列が。『ラ・ラ・ランド』が、いかに多くの人に愛されているのかを、開演前から如実に感じさせる光景だった。

 ステージには、シネスコサイズの巨大スクリーンと、数十名分のオーケストラの座席が設置されている。そして、定刻を少し回った頃、オーケストラの面々が次々とステージに登場、その最後に本日の指揮者であるエリック・オクスナーが登場する。今回の演奏は、オリジナルの映画音楽の作曲者であるジャスティン・ハーウィッツとの綿密な打ち合わせのもと、オーケストラ・ヴァージョンにリアレンジされたものであること、今回はオーケストラの他、映画の内容に合わせて、特別にジャズ・アンサンブルが加わり、彼らは劇中のジャズ・バンド同様、アドリブも披露する予定であること。さらに、通常のクラシックの演奏会では、一曲ごとの拍手は禁物だが、今回のライブでは観客の思いのまま、自由に感情を表現して欲しい旨が伝えられる。

 そして、映画本編ではカットされていた「OVERTURE(序曲)」から、ゆったりと豊穣な響きを奏で始めたオーケストラは、スクリーンに映し出される映画本編とリンクした形で、色鮮やかな衣装を着た人々が車のボンネットに乗って踊り歌う「アナザーデイ・オブ・ザ・サン」を披露。会場が一気に盛り上がる。そこからは、めくるめく映画『ラ・ラ・ランド』のミュージカル世界の始まりだ。

 エマ・ストーンの歌声はそのままに、パーティ会場を舞台に展開する「サムワン・イン・ザ・クラウド」の華やかな狂騒、LAの街を見下ろす丘の上でエマ・ストーンとライアン・ゴズリングがタップダンスをキメる「ア・ラブリー・ナイト」の浮き立つような楽しさ、エマとライアンのデュエットがセンチメンタルな「シティ・オブ・スターズ」など、映画を彩る数々の名曲が、スクリーンに映し出される映画本編とシンクロした形で、次々と奏でられてゆく。途中10分の休憩を挟みながら、冬、春、夏、秋……そして5年後の冬へと、一気に季節を駆け抜けるように披露される、臨場感溢れるオーケストラ・サウンド。圧巻だったのは、そのクライマックスだ。

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