綾瀬はるか、DV男を華麗に締め上げる 『奥様は、取り扱い注意』第1話レビュー

 「分かりやすいレッテルは、私たちを狭い檻に閉じ込めてしまう」。

 ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)の第1話が、10月4日に放送された。本ドラマは、『SP 警視庁警備部警護課第四係』の金城一紀が、原案・脚本を手がけたアクションエンターテインメント。天涯孤独に生まれ育ち、今では専業主婦としてちょっとセレブな生活を送っている伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、主婦たちとの友情や、そばに寄り添う旦那の存在によって、本当の優しさと温かさを知っていく模様を描く。

 エピソード1「料理教室」の冒頭では、菜美の生い立ちから今の生活に至るまでが、スピーディに映し出されていった。椅子に縛り付けられ、中国人の男にビンタされるも、怯まずに睨み続ける女が一人。彼女の名前は島田優子(綾瀬はるか)。ある国家の諜報機関に雇われた特殊工作員である。「私は生まれてすぐに捨てられた。そして、私は人並みの愛には恵まれずに育った」というモノローグにあるように、彼女は29年前に、広島県福山市にある福山西教会礼拝堂の前に捨てられていた。荒んだ世界に身を置く彼女が望むものは、“穏やかな生活と温かな家庭”。それらを手に入れるためには、今いる世界とお別れをしなければならない。

 「女だと思って、ナメてたでしょ?」という一言とともに、身体を拘束されていた紐を一気にちぎり、男を蹴り上げる彼女。突如アクションシーンへと展開していく。彼女は、一瞬逃げる程度の時間を稼ぐために、わざと手加減をして男たちが自らを追うように仕向ける。そうして、追いかけっこが始まるのだが、川の上に架かった橋の真ん中あたりで急に立ち止まった。そこで「だから……私は死ぬことにした」というモノローグとともに、川に身を投げ出すのだ。「島田優子」というこれまでの彼女が死に、「片山菜美」としての新しい人生が始まった瞬間だった。

 ここまでが冒頭約5分間の出来事なのだが、すでに金城一紀ワールド全開。“謎・アクション・闇”という実にワクワクさせる要素が詰め込まれている。

 無事に日本に戻った菜美は、ひょんなことから合コンに行くことに。そこで出会い、初めてひと目惚れした相手が、現在の夫・伊佐山勇輝(西島秀俊)だ。結婚、新居とトントン拍子に話は進んでいき、引越し先のご近所では、大原優里(広末涼子)と佐藤京子(本田翼)という主婦友達もできる。そして、彼女たちに誘われた料理教室で、今回の物語の軸となる主婦・水上知花(倉科カナ)に出会うのだ。

 知花が夫からDVを受けていることを直感した菜美は、彼女を助けたいと思うようになる。知花の夫の口癖は、「君のため」。そう、自分が暴力を振るうのは全部「君(知花)」のせい。「君のため」を思ってやっていると言わんばかりに容赦なく手を挙げ続ける。暴力を振るう自らにも、振るわれる妻にも「君には僕がいないとダメなんだ」と呪いをかけているのだ。まさに“歪んだ愛情”と“完全なる支配”。

 水上家のダイニングには、複数のサボテンが飾ってある。サボテンの花言葉は、「ardent love(燃えるような愛)」「warmth(優しさ、暖かさ)」など。また、知花に暴力を振るって怪我をさせた次の日に、夫が買ってくる花は赤いバラ。赤いバラの花言葉は、「I love you(あなたを愛してます)」「passion(情熱)」などだ。実に皮肉である。長きに渡り、水上家では“歪んだ愛”を真実の愛だと錯覚しているのだから。

 「生活ってある種の檻みたいなものだから」と優里が呟いていたように、“狭い檻の中”で生きている知花は、外の世界を知らない。自由を手にする勇気も、ましてや自分の意思すらないのだ。それを象徴するように、水上家の外観の柵はまるで檻のように高く、鋭い。菜美は、そんな檻の中から彼女を出そうと必死に手を伸ばす。初めは菜美の手をはじき返すものの、徐々に檻の外に出たいと思うようになる知花。そしてついに、自分の足で立ち上がる決意をする。

 夫に向かって「別れてください」「全て私の意志です。自分で決めたことです」と強い眼差しでキッパリと言い切る知花。そんな彼女に夫は「君は僕がいないと生きていけないんだ」と呪いをかけ直そうとする。それでも彼女の意志は固いと悟った夫は、包丁で彼女の腹部を刺し「助けて欲しかったら、ちゃんと言うんだ。“助けてください”って」と口にする。強硬手段で「君は僕がいないと生きていけない」呪いをかけようとするのだ。

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