『コウノドリ』がパワーアップして帰ってきた! 志田未来&高橋メアリージュンの“母親”姿に涙

志田未来&高橋メアリージュン“母”の深み

 「出産は、奇跡だ」の言葉と共に、第一話は始まった。

 隠岐島の美しい海のカットから、綾野剛演じる鴻鳥サクラが学校でピアノを弾くシーンへと続く。儚げなピアノの音が響く中、演奏を聴いていた先生が突然倒れてしまう。佐々木蔵之介演じる荻島医師が力強く自転車を漕ぎながら登場し、先ほど倒れた妊婦が妊娠高血圧症という症状で倒れたことが判明する。そこに未受診妊婦が搬送され陣痛が始まり、ドクターヘリで運ばれたと思えば、先ほどの妊婦が急変してしまう。一方ペルソナ医療センターでは、早期胎盤剥離の患者が急患で運ばれ、四宮(星野源)と下屋(松岡茉優)、また新生児科の今橋(大森南朋)と白川(坂口健太郎)が手術に向かう。


 冒頭から医師達の前に様々な困難が立ちはだかるが、それぞれが情熱的かつ冷静な判断で、壁をするすると突破していく。無事帝王切開で赤ちゃんが誕生する場面、力強い産声と共に「ようこそこの世界に。産まれてきておめでとう」というサクラのナレーションが入る。思わず、涙が出てしまった。前作から二年経った『コウノドリ』がパワーアップして帰ってきたことを感じずにはいられない、感動的なオープニングだった。

 第一話で描かれたのは、主に二組の家族だった。夫婦とも耳が不自由な早見マナ(志田未来)、早見健治(泉澤祐希)夫妻。もう一組はキャリアウーマンとしてバリバリ働く佐野彩加(高橋メアリージュン)と、佐野康孝(ナオト・インティライミ)夫妻。佐野夫婦の赤ちゃんには心室中隔欠損という心臓病が見つかる設定であった。

 早見も佐野も初産でただでさえ不安が多い中、自身の障害のこと、子供の病気のこと、仕事のこと、保育園のこと、そして今後の生活のこと……挙げたらキリがないが、様々な不安や困難が続々と押し寄せてくる。志田演じる早見は柔らかな笑顔が印象的だが、出産が近づくにつれ不安そうな表情が増していたし、高橋演じる佐野が、退院後自宅で一人呆然とする姿は、喉の奥がぐっと詰まった視聴者も多かっただろう。泣いている子を構えない時があるくらい、出産も子育ても大変なのだということがよく分かる描写だった。

 志田も高橋も、母親の役を演じたのは今回が初めてではない。志田は2006年の放送当時センセーショナルな内容が話題になった『14歳の母』でタイトル通り14歳の母を演じているし、高橋も2015年に放送された『残念な夫。』で、子育てに悩む主婦を演じたことが思い出される。

 しかしあくまでドラマの中の役であり、私生活では両者とも出産を経験していないはずなのに、出産シーンも、不安と幸福の中で日々揺れ動く母親の心情を表現するのも、今回の演技はとてもリアリテイがあったように感じる。出産と命をテーマにした作品だからこそかもしれないが、女優二人のそのしなやかな演技に、作品を見ているこちらは自然と感情移入してしまっていた。「どうしても赤ちゃんが欲しかった」というセリフが二人をリンクするよう印象的に描かれていたが、この言葉が二人の母としての演技により一層深みを増していたと思う。


 もう一つ、印象的だったセリフがある。耳の不自由な早見が不安な心の内をサクラに漏らした時、サクラがかけた「迷惑かけたって、いいじゃない」という言葉だ。出産は命がけの行為であるし、育児だって”人を育てる”という、改めて考えてみればとても大きな仕事である。出産も子育ても「迷惑かけたっていいじゃない」という言葉があることを知っているだけで、ほんの少し肩の荷が下りたような気持ちになるのではないだろうか。シーズン1より更にパワーアップしたように感じる綾野の穏やかな雰囲気と優しい言葉たちは、このドラマにとても暖かい空気をもたらす重要な要素だと感じた。

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