井上真央はなぜ毒親から離れられないのか? 『明日の約束』の歪んだ親子関係

『明日の約束』親子関係には何が?

 火曜ドラマ『明日の約束』(関西テレビ・フジテレビ系)で井上真央演じる主人公の藍沢日向は、これまで悩みを抱えた生徒たちを親身になって救い出してきた。誰の目から見ても良い人柄の持ち主で、良識もある。しかし、だからこそ「なぜ“あの母親”と一緒に暮らしているのか?」という疑問が浮かんでしまう。

 第2話までの放送で、日向の母・尚子(手塚理美)の過干渉ぶりは明らかになっている通り。幼い頃から強制的につけさせていた「明日の約束」という交換日記には、「ママがいいと言ったお友達以外とは遊ばない」「ママに口ごたえしない」「ママをイライラさせない」といった約束が記されていた。さらに日向は、「ママに無断で男の子を好きになったりしない」という約束からか、3年もの間、付き合っていた本庄和彦(工藤阿須加)のことを尚子に教えていなかった。


 回想シーン、9歳の日向が開いたページには「日向の読む本も、遊ぶ玩具も、食べるおやつも全部ママが選んであげる。日向にとってそれが一番正しいんだから」と書かれ、尚子が「今日は遊べないの」と家に訪れた日向の友人を追い払う姿が描かれた。日向が生まれてから29年もの間、尚子は日向が自分の意思で手にしたもの、人間関係にも干渉し、自分の思い通りにしようとしてきた。そしてそれは、現在も進行中なのである。

 日向は、週刊誌記者の小嶋修平(青柳翔)から事件の真相について迫られ、気持ちを休めようと和彦の元へ向かう。和彦の家の玄関に入ると、日向は和彦の胸に寄りかかるようにくっつき、和彦はその様子を心配そうに見つめつつ肩を抱く。圭吾(遠藤健慎)の死をきっかけに、様々な人間の悪意が日向に降りかかっていた。「ちょっと怖くなったから」と、日向が第3話にしてやっと誰かに弱音を吐く姿を見せたことは、和彦が日向にとって唯一、安心して寄りかかることができる存在であることを示していた。

 しかし、部屋の中に入るなり、日向の目には、思いもよらぬものが映る。「鎌倉 風月庵」の紙袋と箱。それは昨日、日向が尚子からもらったお菓子のお店のものだった。日向はその日、そのお菓子と尚子から言われた「本庄さん素敵な人じゃない。ちゃんと幸せになるのよ」という言葉を、笑顔で受け取っていた。だが、和彦の部屋で日向は一瞬のうちに表情を強張らせる。「うちのお母さんに会った? 会ったんでしょ? いつ」。日向が尚子のことを和彦に話すときの眼差しはいつも冷たく、声のトーンは低い。和彦は「お母さん、日向のこと心配してて、でもでしゃばると嫌がられるからって」と、黙っていた理由を打ち明けるが、日向は「帰る」と部屋を出て行く。

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