学園ドラマ、“変化球”で社会問題描くのがトレンドに? 『明日の約束』と『先に生まれただけの僕』の新しさ

『明日の約束』と『先僕』、学園ドラマに変化

 視聴者が映画には必ずしも求めず、しかしTVドラマには求めるものは何かと考えると、やはり現代の社会問題とのリンクではないかと思う。この10月クールで視聴率首位を独走する『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)の内山聖子プロデューサーが語ったように「その時代を生きる人の本音をうまく“中継”できているのがいいドラマ」(11月11日付、朝日新聞be)。『ドクターX』のキャラクター設定はぶっとんでいるが、セカンド・オピニオンの問題やAIの導入など、毎回、描かれるトピックはリアルで、リアルな苦しみを抱える患者たちが登場する。

 2010年代のヒット作を振り返っても、夫から精神的DVを受けた女性がヒロインの『家政婦のミタ』(11年)、パワハラ上司に土下座をさせた『半沢直樹』(13年)、パートナーシップの多様性を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)。すべて多くの人が共感する社会問題をうまく取り込み、描いていた。

 ニュースと言えば、筆者には10歳になったばかりの子供がいることもあり、今気になるのは10代の問題である。座間市で起こった連続殺人事件の被害者の中に10代の少女がいることもショッキングだったし、ニュースで中学高校でのいじめや自殺の事件を目にすると、とても他人事には思えない。わが子も分かりやすい10代の願望として「スマホが欲しい」などと言い出した。とんでもない。スマホなんか持たせたら、SNSにハマって、そこで知り合った素性の知れない人に会いに行ってしまうのではないか? そんな大人たちの気持ちをリアルに反映しているのが、10月クールの学園ドラマ2作である。

『明日の約束』(c)関西テレビ

 井上真央主演の『明日の約束』(関西テレビ制作フジ系、脚本/古家和尚)は、リアルニュースでも報道されるようないじめやブラック部活の問題が描かれる。バスケ部員の1年生男子・圭吾(遠藤健慎)が自殺し、その母親・真紀子(仲間由紀恵)は「学校でのいじめが原因だ」と訴訟も辞さない構え。スクールカウンセラーの日向(井上)は、自分にも毒親の母がいるだけに、真紀子が圭吾を追い詰めたのではと疑いつつ、動揺する生徒たちの心をケアしていく。圭吾とバスケ部のキャプテンの間にトラブルがあったことが分かり、それを裏付けるような動画を撮影した生徒が、仲間たちから裏切り者として責められる。そのとき、日向が言った言葉が印象的だった。

「間違ったことをした人間だから、いじめていいなんて理屈はない」

 ネットでの炎上を思わせるこのセリフ。日向の臨床心理士としての専門性を信頼しているのか。生徒たちは日向の言うことなら、素直に聞く。しかし、その日向も、圭吾から自殺の直前に「先生を好きになりました。付き合ってください」と言われたことを秘密にしているし、バスケ部だけでなくクラスでも圭吾を仲間外れにする動きがあったことが分かってきている。サスペンスとしても構成がうまく、先が読めないが、救いのあるラストを期待したい。

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