石原さとみ演じるミコトの持つ“本物の強さ” 医療ドラマの枠を越えた『アンナチュラル』の凄み

医療ドラマの枠越え『アンナチュラル』の凄み

 TBS金曜ドラマ『アンナチュラル』の第3話は法廷が舞台になる。主人公の三澄ミコト(石原さとみ)は、半年前に発生した“主婦ブロガー殺人事件”の裁判に、代理証人として出廷。裁判で証拠として提出された包丁が本当の凶器ではないことに気づき、ミコトは凶器の矛盾を指摘する。それを聞いた被告が罪を認めていたにもかかわらず、無実を主張。夫が犯人なのか、無罪なのか、事件の真実を明らかにするため、ミコトは再び法廷に立つことを決意する。有罪率99.9%のやり手検事とミコトの法廷バトルが見所だ。

 1月12日にスタートした本作。警察や自治体から依頼された遺体を解剖する“不自然死究明研究所”、通称UDIラボで働く死因究明のスペシャリストたちの姿を描いているが、イメージしていた「法医学ミステリー」の枠は完全に超えている。二転三転する展開の面白さも話題だが、登場人物それぞれに背負っているものがあったり、「死」と対峙しているからこそ見える強さがあったりと、丁寧に描かれる人間ドラマに引き込まれてしまうのだ。

 第1話で、記録員としてバイトをしている医大生・久部六郎(窪田正孝)のセリフに「法医学って、死んだ人のための学問でしょ」とあったが、多くの生きている人間(視聴者)にとって、病気やケガを治療する医学のほうが身近に感じられるのは当然だ。そこで、ミコトは「法医学は未来のための仕事」だと即答する。法医学の世界に足を踏み入れたばかりの六郎の戸惑いに対して、ミコトは明快な答えを持っている。彼女にとって許せないのは「不条理な死」で、「死」と真剣に向き合ってきた経験があるからこそ、「生」を実感できる強さを持っているのだ。

 経験とは、実際に見たり行ったりしたこと。同じくUDIラボに勤務するふてぶてしい態度の法医解剖医・中堂系(井浦新)に「中堂さんの解剖実績3000件と私の実績を合わせれば4500件もの知識になります。協力すれば無敵だと思いませんか?」とミコトは持ちかけた。未来をより良いものにするために過去のつらい経験を生かすのが、この物語の主人公だ。テーマは重いし、扱うのは死体。それでも見ていて絶望ではなく希望が感じられるのは、作り手のメッセージが見ている側に強く響くからなのだろう。

 情報を追いかけるだけで知識を得たような錯覚にも陥るが、実際に役に立つのは自分の心と体を動かして得た知識だ。そして、得た知識を誰かと共有することで不可能と思えるような困難にも立ち向かうことができる。

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