向井理、『きみが心に棲みついた』星名役のハマりっぷりがすごい! 原作と瓜二つの“真っ黒な瞳”

向井理、原作と瓜二つの“真っ黒な瞳”

 『きみが心に棲みついた』(TBS系)第2話。キョドコ(吉岡里帆)と星名(向井理)の共依存関係は、さらにエスカレートしていく……。「ほかの人に優しくしないで」。号泣しながら星名を追いかけるキョドコは、まるで母親に置いて行かれた子供のようで、観ていられなかった。星名から「卒業したい」と言っていたキョドコは、面倒見のいい吉崎(桐谷健太)への想いを加速させていく。だが、そんなことは許さないと、星名は飯田(石橋杏奈)を誘惑し、キョドコの嫉妬心を煽ることで、自分のもとへと手繰り寄せていくのだった。

 「終わりにしたくないんです」。苦しいのに、その関係性を断つことができない。それは、キョドコにとって、星名が初めて自分を認めてくれた“愛”を象徴する存在だったからだ。多くの人の場合、生まれたばかりの自分を慈しみ、育ててくれる親が、ありのままを受け入れてくれる。だが、キョドコにはその経験がない。意思とは関係なくどもってしまう口調を母親から「恥ずかしい」と罵られ、親戚の前に出せないと存在を消されてしまう。その傷ついた心のシェルターになってくれたのが星名だった。キョドコからすれば、星名を卒業するというのは、親と絶縁するよりも難しい。

 一方で、第2話では星名の過去が少しだけ描かれた。日常的に父親から暴力の虐待を受けていたこと、端正な顔立ちは整形手術によるものだということ……。心の傷は他人と比べられるものではないが、母親から受け入れられなかったキョドコと父親からひどい仕打ちを受けていた星名は、近しい傷を抱えている。自尊感情が低く、他者に関心を持ってもらうことでしか自分の存在価値を見出すことができないのは、キョドコだけではない。むしろ星名こそ、自分を求めてくれるキョドコという存在がいて、初めて自分の存在意義を感じられるのだろう。このふたりの間にあるのは恋愛感情ではなく、自分が生きていていいのだという承認欲求。だからこそ、キョドコの「好き」は、吉崎にどういう意味かと聞かれても答えられないのだ。

 吉崎との出会いをきっかけに星名という親離れをし、自立したいと願ったキョドコ。そんなキョドコを傷つけることでしか自分を保てない星名。お互いを縛っていく先に待っているものとは……。この先、さらにエスカレートしていくふたりを思うと、胸が押しつぶされそうだ。スズキ次郎(ムロツヨシ)のコミカルなシーンだけが、視聴者にとっての一服の清涼剤。だが、彼は唯一、星名の闇に一瞬で気づいている。彼もまた、何かに傷ついた経験の持ち主なのかもしれない。明るく振る舞っているからといって、心の傷がないわけではない。誰もが、自分の闇とうまく付き合っている。だからこそ、キョドコと星名にも、そんな未来を願ってやまない。

 過激な描写は控えめに改変されているものの、ストーリーは原作コミックに忠実な本作。原作を手に取った方は、星名を演じる向井の再現性の高さに驚くのではないだろうか。特に、心の闇を感じさせる暗い眼差しは、漫画表現にある瞳を真っ黒に塗りつぶしたかのようだ。個人的に向井が星名を演じるには、毒気が少ないように思っていた。だが、蓋をあけてみれば、その“人を陥れそうにない爽やかなイメージ“こそ、星名を演じる上で欠かせなかった要素だったのだと気付かされる。

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