中村アン、嫌味のない策士っぷりを発揮! 『きみが心に棲みついた』仕事ドラマとしての一面を読む

中村アン、嫌味のない策士っぷりを発揮!

 『きみが心に棲みついた』(TBS系)は、キョドコ(吉岡里帆)と星名(向井理)の共依存関係を中心に、複雑に入り組んだラブストーリーだが、仕事ドラマとしての一面もある。

 「どんなに頑張っても、肝心なときに過去の自分が邪魔しに来よる」。キョドコ(吉岡里帆)とタッグを組んだ、デザイナーの八木(鈴木紗理奈)が放ったこの言葉は、ひとつの恋愛がその後の仕事や人生に大きな影響を及ぼすことがある、という実体験から出たもの。

 かつて上司と恋愛関係になった八木は、それが原因で部長の個人的な恨みを買ってしまう。そして、希望していなかったメンズ部門へと理不尽な人事異動を強いられた過去を持つ。時を経て、新ブランド立ち上げというチャンスにも、部長から邪魔されそうになる。だが今回は、過去に悔し涙を流したときとは、決定的に違うところがあった。それは八木にはキョドコや堀田(瀬戸朝香)という味方がいることだ。

 「どうにもならない」と諦めかけたときに、負けず嫌いな八木に発破をかけ、ともに窮地を乗り切ろうと手を差し出す。そして、最終プレゼンで八木と堀田は、お互いのデザインをすり替えて説明を行なった。八木を気に入らない部長は、当然堀田のデザインを選ぶ。それが八木のデザインだとも知らずに。対人操作が得意な星名も、部長よりもさらに上の常務と繋がりを持ち、部長の鼻をあかす。まさにドラマ的展開ではあるものの、八木が縛られていた過去から逃れる姿はスッとした。それは、部長を打ち負かしたというよりも、八木が人に心を開く勇気を持った勝利。キョドコのことを近づけなかったのも、ライバルの堀田を過剰に敵視していたのも、もう傷つきたくないという恐れの裏返しだったのだから。

 痛い過去を打破するには、自分が自分を許すしかないのかもしれない。そのためには、誰かの手を握ってみる勇気が必要なのだ。星名の支配に苦しみながら逃れられずにいたキョドコにも吉崎(桐谷健太)という理解者が現れ、少しずつ今の幸せを手にしようと前向きになってきた。だが、そこにはライバルも多い。吉崎の職場にいる後輩編集者の為末(田中真琴)、そして吉崎の大学時代の元カノで人気ライトノベル作家の映美(中村アン)だ。この映美というキャラクターは、ドラマオリジナル。原作コミックでは登場しないだけに、うまくいきそうな吉崎とキョドコの間を、どうかき乱していくのか注目だ。

 それにしても、映美のしたたかさは見事だった。吉崎と一緒にいることを匂わせる写真をSNSに投稿したり、ハッシュタグでさりげなく付き合いの長さを強調したり。為末が、露骨にキョドコを嫌い、吉崎に向かって「あの人は星名さんのストーカーですよ」と悪印象を植え付けようと必死なのに比べると、余裕すら感じてしまう。映美のアプローチは、急にキスをする、家に押しかける……と、為末よりやっていることは大胆なのになぜか許されてしまうのだ。キョドコには「男を騙すメギツネ!」と言っていた為末も、どういうわけか映美には懐いている。キョドコに負けるのは癪(しゃく)だが、映美なら納得、ということだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる