「死んでも彼らに痛みは届かない」 『アンナチュラル』が伝える“いじめ問題”へのメッセージ

『アンナチュラル』が伝える"いじめ問題”

 集団自殺に見せかけた殺人、長時間労働による過労死、仮想通貨詐欺など、現代に起こりうる様々な“死‘を扱ってきたドラマ『アンナチュラル』(TBS系)。第7話「殺人遊戯」では、ついに日本のみならず世界が抱える人間の闇“いじめ問題”をテーマにストーリーが繰り広げられた。

 第7話でUDIラボ(不自然死究明研究所)に届いたのは、不自然死した遺体ではなく“殺人実況生中継”。主人公・ 三澄ミコト(石原さとみ)の弟・秋彦(小笠原海)が勤める塾の男子生徒・白井(望月歩)が“殺人者S”と名乗り、自分が殺したと言うYの遺体をライブで配信し、ミコトにYの死因を究明しろと挑戦状を送りつけてきた。制限時間は、生配信の視聴者数が10万人になるまで。死因がわからなければ、もう1人の人質Xも殺すという脅迫だ。

 視聴者が増えるとヒントが与えられ、そこから明らかになったYの正体は、同じ高校に通う男子生徒・横山(神尾楓珠)。同クラスの小池(小野寺晃良)率いるリア充グループに属してたと言うが、配信動画から致命傷となった刺し傷以外に体中にあざがあることがわかり、日常的に小池らから、横山はいじめを受けていたことが判明する。

 そしてミコトが出した答えは”刃物による自殺”。小池らにいじめられていた横山と白井は、小池たちに殺人罪の容疑をかけるため“遊び”として自殺を計画するが、追い詰められた横山はついに一人で“殺人遊戯”を実行した。しかし、ここまでは法医学者としての見解。

 ミコト自身は、この一件を「法律ではさばけない“いじめ”という名の殺人」と約10万人が見守る生配信の場で告げる。例え直接的な死因にならなくとも、文字も言葉も暴力も無視も仲間はずれも、見て見ぬふりも、“いじめ“は立派な犯罪なのだ。

 生配信の視聴者数は10万人に到達し、人質Xが殺されることになった。Xの正体は、白井本人。彼は2人を苦しめた犯人たちの名前を明かし、配信動画を遺書とし、自ら命を絶つことを選択しようとする。そこで彼にかけたミコトの「あなたが死んで何になる?」というせりふは、今制服を着ている全員に届いてほしい言葉だった。

 いじめの苦しみから死を選択しても、加害者は被害者の苦しみなど忘れて幸せに生きていく。「あなたの痛みは決して彼らに届かない」「あなたが死んで何になんの。あなたの人生は、あなたのものだよ」。

 制服を着ているほとんどの少年少女にとっての社会は、学校と家の2箇所でしか形成されていない。でも、制服を脱げばもっと広い世界が待っている。制服のまま命を絶ってもそれは復讐にはならず、罪悪感も数年で消え、“いじめ”の事実は思い出のゴミ箱に入れて、加害者は幸せな人生を送る可能性を持ち続ける。

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