深川麻衣、“聖母的アイドル”から“奥ゆかしい女優”へ 『パンバス』こじらせ女子の魅力を考察

深川麻衣の奥ゆかしい魅力を考察

 乃木坂46の現役/卒業メンバーで、1番の出世頭といえるのは、現在女優としてのキャリアを順調に進めつつある深川麻衣ではないだろうか。乃木坂46卒業後は、ドラマ『プリンセスメゾン』(NHK BSプレミアム)に出演。舞台『スキップ』では、主演を務めた。さらに、現在公開中の映画『パンとバスと2度目のハツコイ』(以下、『パンバス』)では、映画初出演。同時に主演も務めている。そのため、映画のプロモーションとして、バラエティへの露出も増えている。

 彼女は、グループ在籍時代、穏やかで、深い気遣いのできる性格から、“聖母”と呼ばれてきた。例えば、地方出身で、転校先の学校へ通うのに慣れなかったメンバーいわく、「上京して東京に慣れるまで学校に付いてきてくれた」とのこと。また、他のメンバーが、深川卒業直前に思い出を総括したとき、「ブレない」、「悪いところが見つからない」とも評し、これを聞いた周囲のメンバー誰もがうなずいていた。

 卒業後は、芸能界の先輩たちとの共演が多く、表立ってメンバーに頼られるところも見られなくなり、その“聖母”的魅力は感じにくくなったものの、代わりに“奥ゆかしさ”というべき新たな魅力を発揮している。バラエティでは、控えめで、番組の空気を読み、共演者の話の振りに良い塩梅に乗っかるタイプで、聞き上手な一面を見せる。また、ダウンタウン浜田雅功と共演した際は、彼のSっ気が強く、共演者をイジるキャラを踏まえ、そこを最大限に活かしつつ頼りにするなど、引き立て役もこなしていた。


 そんな深川は『パンバス』でも、控えめで穏やかではあるが、芯の強さも備えた市井ふみ役を見事に演じている。『パンバス』は、パン屋に勤めるふみが、通勤途中、バスターミナル近くを通り、そこで見かけたバスの運転手で、彼女の初恋の相手でもある湯浅たもつ(山下健二郎)と偶然再会。そこから、つかず離れずの関係で過ごしていく話だ。

 ふみは、「考えすぎて何ごとも一歩踏み出せない」という一面を持っていて、好きという気持ちについて考えすぎてしまい、恋愛や異性との友人関係がなかなか上手くいかない。ふみには長年付き合ってきた彼氏がいて、プロポーズもされたが、「自分も一生好きでいられるかわからないし、彼も一生好きでいてくれるかわからない」という理由で断っていた。また、「人から好かれるとなんかひいちゃうんだよね。自分なんか、って」とふみが告げ、たもつが「じゃあ俺がふみのこと好きになったら、俺らの関係も終わっちゃうわけだ」と冗談めかしに返す。そこで、「そう。だからお願いだから、好きにならないで」と、穏やかながら胸をしめつけるような台詞を言う。


 そうしたふみの人物造形は、深川本人の“奥ゆかしさ”とも通じているように見える。実際にインタビューでも、深川が自身との共通点として、次のように答えている。「何ごとも考え過ぎちゃうところは似てますね」(以下、『パンとバスと2度目のハツコイ』劇場パンフレットより)と。ちなみに、本作の監督・今泉力哉も、深川に関して、「すごくいい人だとは聞いてはいましたが、本当にその通りで。最初は僕に気を遣っているのかな?と勘繰りたくなるくらい、非の打ちどころがない方でした」と述べている。

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