鈴木亮平、西郷吉之助役になぜハマる? 『西郷どん』で見せるストイックさと包容力

 NHK大河ドラマ『西郷どん』で主人公、西郷吉之助(隆盛)を演じている鈴木亮平。難解な薩摩弁をマスターし、相撲好きだったという西郷を演じるにあたり相撲の稽古にも励み、役と向き合うその姿勢は相変わらずストイックだ。チャーミングだけど、無防備で無鉄砲。泥臭くなりすぎないバランス感覚に品の良さも感じられる。

 第8話「不吉な嫁」では、橋本愛演じる最初の妻・須賀との切ない別れの場面はとくに印象的で、彼女が秘めていた想いに寄り添い、女心には鈍感だった男の成長も見てとれた。愛想笑いもできない不器用な須賀の繊細な愛情表現をおおらかな包容力で受け止める。

 理想的な夫婦ゆえ、タイミングの悪さに運命の無情を感じる。実際、西郷は須賀との離婚を後悔していたといい、江戸に出発する前に家族の前で「吉二郎のことを兄と思う」というセリフも本人が同じ言葉を言ったと伝えられている。鈴木が演じる西郷は、ドラマならではの脚色があるにせよ、こんな男がいたら放っておけないと思わせる魅力がある。

 激動の時代、波乱万丈な人生を生きた西郷だが、偉人として祭り上げられ、多くの人に影響を与えただけでなく、この人もまた周囲の人から大きな影響を受けたことで桁外れのパワーを身につけたのだろうと感じさせる薩摩青春編の締めくくりだった。

 西郷を演じる鈴木のストイックさ、役柄によって見違えるような変貌を遂げる柔軟性には驚かされるが、名もなき下級武士から天下国家を左右する伝説の大人物になった西郷もまた環境の変化を受け入れる人であったのだろう。鈴木もまた、デビュー当初から主演クラスを演じたわけではなく、役を重ねるごとにステップアップを果たしてきた。惜しみない努力を重ね、成長をし続けたからこそ西郷という大役を射止めることができたのだろう。

 『西郷どん』の最新キャストポスターには「日本がほれた男」と書かれている。頑に自分だけを守ろうとする男には誰も惚れない。隙がある人はモテるともいわれるが、隙というよりも相手の気持ちや変化を受け入れる余裕があるかどうか。それが重要なのだ。

 西郷が、貧乏でも愛情あふれる家族の中で育ち、大久保正助(瑛太)をはじめ友人に恵まれ、生涯の師となる島津斉彬(渡辺謙)とも出会えたのは、人徳があったからだともいえるが、経験によって学び、苦労や挫折があったからこそ、その人間性は磨かれたのだろう。

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