江口を演じられるのは中村倫也しかいない! 『崖っぷちホテル!』で見せた表情の変化

中村倫也、『崖ホテ』で見せた表情の変化

 威厳0の若き総支配人とクセ者揃いの従業員、そしてラフな格好で現れた謎の男こと現・副支配人、宇海(岩田剛典)が、破産寸前の老舗ホテル「グランデ インヴルサ」を立て直していくコメディドラマ「崖っぷちホテル!」。4月29日に放送された第3話では、第2話で人事降格させられた元・副支配人、時貞正雄(渡辺いっけい)と元・総料理長、江口竜二(中村倫也)が役職復帰をかけて企画バトルを行うことになった。今回注目したのは、中村演じる江口である。

 中村演じる江口は、第1話で総料理長の座に立っていた男だ。とはいえ、総料理長らしい風格は全くなく、調理場では制服をだらしなく着用し、競艇新聞を読み込んでいる。調理補佐をしているパティシエの鳳来ハル(浜辺美波)に適当な指示を与え、作中あまり調理をしている姿が見られなかった。常に不服そうな表情を浮かべ、口を開ければやる気のない言葉ばかりが飛び出す。しかし料理人としての実力はあるようで、食材選びや調理方法、食に関する知識は豊富。第2話では、総料理長の座をハルに奪われながらも、無愛想なまま助言を与えた。不服そうな表情からは分かりにくいが、料理人として、ホテルの一従業員として、自分がお客様に何ができるかを考えているようで、時折見せる真剣な目つきが、江口の成長を期待させる。

 江口演じる中村倫也の演技には静かな印象がある。表情をコロコロ変え、底抜けに明るく空気の読めないハルを演じる浜辺とは対照的に、中村は表情をほとんど変えることなく江口を演じる。しかし、彼の料理人としてのプライドや経験値、お客様に対する思いは、無愛想な表情からでも確かに感じ取ることができる。中村がみせる細やかな目の動きや口元のかすかな動きだけで、江口が葛藤している様子を理解することができるのだ。そして、第3話で中村がみせた江口の葛藤は、プライドだけは高い料理人から、お客様を第一に思うホテル従業員としての成長へとつながった。

 特に印象的なシーンは、役職復帰かけて躍起になる時貞に対して怒りを露わにするシーンだ。自身の企画を成功させるために、高級スイートルームに泊まる顧客だけを丁重に扱う時貞。彼は江口を手伝うハルを軽蔑し、江口の企画参加者である親子を下に見るような発言をする。江口はそんな時貞に対して「自分のお客様じゃなくて、ホテルのお客様だろ」と声を荒げ、時貞に殴りかかる。この時の表情は、やる気のない、いつもの江口ではない。総料理長の座を降ろされるかもしれないのに健気に自分を応援するハルや調理体験に参加できず疲れた表情をみせる父親、時折さみしそうな表情をみせるその息子の姿が心の中に浮かんでいたのだろう。彼らを思い、無愛想でやる気のない江口が感情を爆発させる姿を、中村は見事に演じている。はっきりと怒りを見せた彼の目に、いつもの不服そうな気だるさは漂っていない。

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