山崎賢人、残された者の悲しみと向き合う 『グッド・ドクター』胸の奥にある天国に通じる扉

『グッド・ドクター』残された者の悲しみ

 「もう胸を叩いても、お兄ちゃんの声が聞こえません」。『グッド・ドクター』第6話で、左胸を叩く湊(山崎賢人)の姿は、とても苦しそうに見えた。湊は、いつも患者の手術の無事を祈るように、優しい眼差しで何かを語りかけるように、優しくトントンと胸を叩き、兄と通じていた。

 幼い頃、司賀院長(柄本明)に「こうやって胸に手を当ててごらん。ここにはね、天国に通じる扉があるんだ。寂しいときや苦しいとき、いつでもここをノックしてごらん。湊の声が必ずお兄ちゃんに届くはずだ」と言われた時から、湊はその仕草を続けている。お金が目当てで会いに来た父親の航(遠山俊也)から「お前のせいで奏太は死んだんだよ!」と告げられた湊には、どんなに強く左胸を叩いても、兄の声が聞こえなくなってしまった。「僕じゃなくて、お兄ちゃんを助けた方がみんな幸せでした!」「お兄ちゃんはいつも僕を助けてくれました。でもお兄ちゃんが一番助けてほしいとき僕が邪魔をしました」自らを責める言葉ばかりが溢れ出す。

 湊は東郷記念病院に初めて来た時から、周りからの厳しい風当たりにも、傷ついている様子を見せていなかった。高山(藤木直人)から「画像診断科に行け」と告げられた際にも、「どれだけ怒られても小児外科医になります」と全くへこたれず、一心に小児外科医を目指してきた。しかし、そんな湊の口から「僕はもうお医者さんにはなれません」という言葉が飛び出す。

 そんな湊の背中の押したのが夏美(上野樹里)だ。「あの日、生かされたあなただからこそ、今、できることがあるんじゃない?」。夏美は、司賀院長が「大切な人を失った悲しみを知っている湊だからこそ、必ずいい医者になれるはずです」と話していたことを湊に伝える。湊は、産婦人科からの依頼で、高いリスクを伴う水野理香(篠原ゆき子)の手術の助手を務めることになっていた。だが、理香が狭心症を発症して意識が戻らず、予断を許さない状況に。「私はどうなってもいいんで、この子だけは助けてください」という理香の思いと、「妻がいなくなることだけは耐えられない」と母親だけでも助けてほしいと願う夫・悟の気持ち、両方の思いを汲み取れるのは湊だった。「残された方は、とても悲しみます」。兄を失った時の悲しみを告げ、「僕は2人とも助けたいです」という湊の言葉が悟の心を動かした。

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