『中学聖日記』は社会に根ざした作りに 『Nのために』と共通するテレビドラマならではの演出

『中学聖日記』は社会に根ざした作りに

 火曜夜22時から放送されているドラマ『中学聖日記』(TBS系)は中学校教師の末永聖(有村架純)が、教え子の男子中学生・黒岩晶(岡田健史)と禁断の恋に落ちる恋愛ドラマだ。

 聖は晶のことを教師という立場から拒絶するが、二人の距離はどんどん近づいていく。夏休みの夜、花火大会の帰り。二人は浜辺で偶然出会い、キスをする。これで最後だと思っていた二人だが、帰り道に手をつないでいるところを、聖の恋人の川合勝太郎(町田啓太)と晶の母親・愛子(夏川結衣)に見られてしまう。聖は学校を退職。勝太郎との婚約も解消し、晶のもとから姿を消す。

 物語は第1話〜5話までの晶の中学生時代と、6話以降の高校生編の二部構成となっている。原作はかわかみじゅんこの同名漫画(祥伝社)。漫画は現在4巻まで発売されていて、本作もまた、中学生編と高校生編の二部構成となっているが、ドラマ版とはだいぶ印象が違う。

 漫画版の導入部は、教壇で聖の黙祷する顔を見ている晶のモノローグからはじまり、年上の先生に憧れる晶の視点から物語はスタートする。

 物語が進んでいくと聖の視点、晶に恋心を抱く同級生の岩崎るな(小野莉奈)の視点も描かれるのだが、基本的に序盤は晶の主観で物語が描かれていく。人物造形も微妙に違い、晶は頭が良くて理知的だけど人の心が理解できない天然の男の子。逆に聖は教師だけど優柔不断でふわっとしたところがある女の子で、二人ともどこかふわふわしていてとらえどころがなく、だからこそ周囲はその魅力に翻弄される。

 そのため物語は「聖←晶←るな」という感じで、ブラックホールに吸い込まれるように恋愛関係の矢印が進んでいくのだが、その構造がとてもおもしろい。

 ドラマ版では前半のクライマックスとして盛り上がっていた聖との別れも、漫画版ではあっさりしていて、夏休みが終わったら、聖が学校を辞めていたことが晶のモノローグで語られる。このあっさりとした見せ方が、とらえどころのない聖や晶の魅力とリンクしていて面白いのだが、ドラマ版は、あっさりした部分をこってりと見せることで、印象のまったく違う作品となっている。

 中でも大きく印象が違うのは聖だ。おそらく、主演が有村に決まったことと、TBS系火曜10枠のカラーに合わせた結果だろうが、漫画では掴みどころのない性格だった聖の輪郭がかなりくっきりしており、同時にとても生々しくなっている。それは晶にしても同様で、思春期の鬱屈が全身から滲み出ており、本作で俳優デビューとなる岡田の初々しい芝居とリンクしている。

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