大泉洋主演ドラマ『ノーサイド(仮)』も決定 池井戸潤原作の映像化にみる“経済時代劇”的手法

池井戸潤原作が映像化される理由とは

 日本の会社で会議といえば、たいしたことを決めないくせに時間が長いなど、とかく改善すべきものとされることが多い。ところが、会議をモチーフにしながら上質なエンターテインメントになったのが、池井戸潤原作の映画『七つの会議』だった。TBS系で『半沢直樹』、『下町ロケット』、『陸王』といった池井戸原作ドラマを手がけた福澤克雄が監督を務め、これらの作品の出演者を多く起用した『七つの会議』は、総決算的なしあがりになった。

日曜劇場『ノーサイド(仮)』(c)TBS

 池井戸潤の小説は、会社や銀行など組織をめぐる問題に立ち向かう人を描くことが多い。TBS系に限らず、池井戸の小説はドラマや映画で数多く映像化されてきた。7月には今夏刊行予定の新作を原作として、またTBS系で『ノーサイド(仮)』(大泉洋主演)がスタートする。同作でも演出に名を連ねる福澤は、映画『七つの会議』において、池井戸作品を映像化する面白みとはこういうものだと、自ら再確認している趣があった。

 同映画は狂言師の野村萬斎を主役とし、落語家の立川談春と春風亭昇太、歌舞伎界から片岡愛之助、また映像関係でキャリアを積んだ後に歌舞伎へ進出した香川照之も含め、伝統芸能関係者が多かった。また、劇団四季出身の鹿賀丈史、王子様然としたアーティストでもある及川光博など、濃い芸風の人を揃えたのである。舞台経験も豊かな彼らが、順繰りにクローズアップされ、顔芸ともいえる表情の演技を競う。そのなかで芸人の藤森慎吾がコント的なふるまいをみせるから、役柄として要求される軽薄さもうまく引き出される。

 池井戸の『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』をドラマ化した『半沢直樹』で堺雅人が演じる半沢が「倍返しだ」を決めゼリフとしたのに象徴される通り、福澤演出は時代劇的な誇張が特色だった。高橋英樹の当たり役だった『桃太郎侍』で毎回、「一つ、人の世 生き血を啜り」から始まる決まり文句を述べてからチャンバラを始めたようなものだ。スタッフは違うが、池井戸の『不祥事』を日本テレビ系でドラマ化した『花咲舞が黙ってない』も似た傾向だった。杏の演じる花咲には「お言葉を返すようですが」の決めゼリフが用意されたのである。『半沢直樹』も『花咲舞が黙っていない』も、ドラマは原作と異なるタイトルがつけられた。

 『水戸黄門』、『遠山の金さん』、『大岡越前』、『銭形平次』など、かつて人気を博した時代劇ドラマで悪を懲らしめる主人公の名前、呼び名をタイトルにしたのに通じるテイストだ。善玉の主人公のキャラをいかに引き立てるかが、時代劇的な演出の肝なのだ。

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