『HiGH&LOW THE WORST』久保茂昭監督が語る制作の裏側 「普通の映画とはちょっと違う」

『HiGH&LOW』久保監督が語る

 大人気バトルアクション映画『HiGH&LOW』シリーズと、高橋ヒロシによるマンガ『クローズ』『WORST』がコラボした映画『HiGH&LOW THE WORST』が全国公開中だ。

 2015年以降、映画・ドラマ・漫画・音楽・ライブなど様々なメディアを通して男たちの友情と熱き闘いを描いてきた『HiGH&LOW』シリーズと、累計発行部数7500万部を突破する、不良漫画の金字塔『クローズ』『WORST』がクロスオーバーした本作。両人気シリーズの主な舞台となった街・戸亜留市とSWORD地区が交差した世界で、通称“漆黒の凶悪高校”鬼邪高校と、幹部以外全員スキンヘッドの最強軍団・鳳仙学園の両高校が登場し、世紀の頂上決戦が幕を開ける。

 本作のメガホンを取ったのは、これまで『HiGH&LOW』シリーズも手がけてきた久保茂昭監督。人気シリーズ同士のコラボレーションという難題にどう挑んだのか。高橋ヒロシ作品の大ファンでもあるという久保監督に、制作の裏側について話を聞いた。(編集部)

 「『クローズ』『WORST』の存在がなければ、『HiGH&LOW』はなかった」

ーー『HiGH&LOW THE WORST』は、『HiGH&LOW』と『クローズ』『WORST』のコラボレーション作品となっています。まずは、本作の企画がスタートした経緯を聞かせてください。

久保茂昭(以下、久保):まず、僕とHIROさんが出会う前から、『クローズ』『WORST』の原作者である漫画家の高橋ヒロシ先生は『エグザムライ戦国』(2009年放送のアニメ作品で、EXILEのメンバーを模した侍や忍者が登場。「月刊少年チャンピオン」連載のコミック版も)のキャラクターデザインを手かげていたこともあって、その頃からHIROさんとは交流があったんじゃないかな。

ーー『エグザムライ戦国』以後も、メンバーに、高橋先生が直筆イラストを送ったりと、様々な交流はあるようです。その後、『HiGH&LOW THE WORST』の具体的な話に発展したのはいつ頃でしょうか?

久保:『HiGH&LOW THE MOVIE 3/FINAL MISSION』の編集をしている頃でしょうか。HIROさんから「『クローズ』『WORST』との企画を考えている、高橋先生のOKはもらっている」という話は聞いていました。まだ内容は固まっていなくて「相手が鳳仙」と言っていたような記憶はありますね。ただ、「そういうアイデアがある」というレベルの話で、誰が撮るのかも決まっていなかったし、「『クローズZERO』シリーズの三池(崇史)監督が撮るのかな」とか思っていました(笑)。

ーーその後、久保監督に白羽の矢が立ったと。

久保:実は『HiGH&LOW』って、正式なオファーの話はいつもないんですよ(笑)。LDHのミュージックビデオの仕事もやっているので、その際にHIROさんから「次の打ち合わせで『HiGH&LOW THE WORST』の話をしますよ」と言われ、「えっ? 僕がやるんですか?」「そうです」みたいに進んでいきました。さすがにその時はプレッシャーがすごかったですね。

ーー監督も、高橋ヒロシ作品の大ファンだと伺っています。

久保:高橋先生の漫画って、一人ひとりの佇まいがしっかりとあって、キャラに意志が感じられるんですよね。同じ方向を見ていても、立ち方が違ったりして。EXILEのミュージックビデオや『HiGH&LOW』を撮るときも、色々と潜在的に参考にさせてもらった部分は多いんです。『クローズ』『WORST』の存在がなければ、『HiGH&LOW』はなかったということは伝えました。

ーー作り手にリスペクトがあるとはいえ、『クローズ』『WORST』と『HiGH&LOW』の別の世界観をドッキングさせるのは難しい作業だったのでは。

久保:脚本は、『HiGH&LOW』のノリさん(平沼紀久)と増本庄一郎さん、渡辺啓さんたちが、長野にある高橋先生の作業場で合宿して書きあげたそうなので、最初の段階でうまく混ざっていると感じました。

ーーそうなんですね。

久保:それをどう映像化するのかについては、悩みました。原作漫画も大好きですが、三池監督の『クローズZERO』シリーズも本当に好きで、当時劇場で観て大きなインパクトを受けた作品なんです。実写映画ということもあって、当たり前ですが『クローズZERO』とは比べられるじゃないですか。そのプレッシャーもすごくありました。でも、今回はキャストも舞台になる時代も違う、そこでいかに勝負できるかということは考えました。

ーー『HiGH&LOW THE WORST』ならではの映像で勝負できると。

久保:『クローズZERO』は『クローズZERO』だけの世界観なので、そこで映像のトーンは決まりますが、今回は『HiGH&LOW』のトーンも入りますので、ふたつの世界観が別々に見えるように、色のコントラストには気を使いました。鳳仙の方は冷たい色味でモノトーンで描いていて、一方の鬼邪高は、メキシカンギャングのファッションに学ランを合わせるようなイメージで衣装を作っているんですね。色のトーンでいうと、中南米の熱いカラーがありつつちょっとセピアも入っているような。そういうアプローチの違いは丁寧にやっていきたかったので。

ーーまずはヴィジュアルのインパクトで見せていった。

久保:その上で『HiGH&LOW』、鬼邪高の世界に、鳳仙がドンと入ってきて、どう影響を与えていくのかという見え方を作りたかった。オープニングは、電車から鳳仙が降りてきて、その向かう先は鬼邪高……みたいな。このシーンの脚本は、完成版とまったく違うものでしたが、編集の時点でどうしても変更したくて。やっぱり高橋先生も関わっている脚本なので、リスペクトしながら進めていくのは前提なのですが、むしろさらにリスペクトするために、あのようなオープニングにしました。

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