iTunesの音楽ダウンロード販売、終了したらどうなる? 音楽評論家・小野島大に聞く

 Apple Musicのビジネス戦略における最重要人物である音楽プロデューサーのジミー・アイオヴィンが、BBCの取材に対し、iTunesストアの音楽ダウンロード販売が終了する可能性について、「具体的な日時は決まっていないが」としつつ、「(iTunesが終了するのは)人々が楽曲を購入するのをやめた時だ」と語り、話題となっている。(参考:http://www.bbc.com/news/entertainment-arts-43515185

 ジミー・アイオヴィンの発言は、ダウンロード販売の中止を宣言するものではないものの、Apple MusicやSpotifyといったストリーミングサービスの登場で、世界的にダウンロード販売のニーズは減少しており、サービス自体が縮小していくことは避けられないところだ。

 総務省が発表した平成28年(2016年)度の「世界の音楽配信売上高・契約数の推移及び予測」によると、2013年の音楽配信ダウンロードの売上高は約46億ドル、ストリーミングの売上高が約16億ドルだったのが、2019年にはそれぞれ約37億ドル、約48億ドルに推移すると予測されていた。実際、2017年のストリーミングの売上高は40億ドルを突破しており、結果として米音楽市場の総収益も前年度から16.5%増加の87億ドルとなっている。(参考:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc122220.htmlhttp://rollingstonejapan.com/articles/detail/28157

 実際にiTunesが終了した場合、ダウンロード配信は今後どうなるのか。音楽配信ビジネスに詳しい音楽評論家の小野島大氏に話を聞いた。

「ストリーミングサービスであらゆる音楽を気軽に聞けるようになった現在、iTunesのダウンロード販売に先行きがないのは明らかです。個人的には、気に入った音源はローカルのディスクにダウンロードして良い音質で聴きたいのですが、iTunesの音源は圧縮されているため、購入してまで聴こうとは思えません。それなら、割高でもCDやハイレゾ音源を購入したほうが良い。iTunesは、ほかの音楽ダウンロード配信サービスに比べてユーザビリティが高かったので、もしもハイレゾ音源を販売していたら、多少値段が高くても購入していたと思います。レコード会社からは高音質な音源を供給されていたはずなので、iTunesがハイレゾ配信を行うこと自体は難しくなかったでしょう。しかし、世界的に見てもハイレゾ音源はあまり盛り上がっておらず、ニッチな趣味となりつつあるので、今後、iTunesで扱われる可能性は低そうです。ダウンロード販売は今後、ハイレゾ音源を配信している既存のサービスに代替されていくのではないでしょうか」

 ストリーミングサービスにおいても、高音質な“ロスレス再生”を謳う「Deezer HiFi」などのサービスが登場しており、ダウンロード販売のニーズは今後ますます、オーディオマニアやDJの音源活用などに限定されていきそうだ。

 しかし、レコード会社やアーティストによっては、現在もストリーミング配信を行っていないケースもある。

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