漫画村がアクセス不可にーー白熱する“サイトブロッキング”論のポイントを弁護士に聞く

サイトブロッキング議論の論点とは

 漫画の海賊版サイト「漫画村」が4月11日からページにアクセスできない状態が続いている。現在トップページにはアクセスできるものの、個別ページにアクセスを試みると「Bad gateway」とエラーが表示される状態になっており、SNSなどでは「閉鎖したのではないか」との推測もされている。

 一方、政府が海賊版サイトへの対策は緊急を要するとして、4月中にも、接続を遮断する「サイトブロッキング」をISP(インターネットサービスプロバイダ)各社に対して要請する準備を進めていることが各メディアで報じられたが、導入に異を唱える声も多数上がっていた。「漫画村」がこのまま閉鎖するかも定かではなく、また類似サイトにより今後も同様の問題が生じることが予想されるなかで、この議論はさらに続くことが予想される。

 この議論のポイントは、どこにあるのか。不動法律事務所の小杉俊介弁護士は「サイトブロッキングに関する報道と、漫画村にアクセスできなくなっていることの関連は分からない」とした上で、次のように語る。

「この議論の背景には、漫画村の影響で漫画本の売り上げの落ち方が激しく、立法を待っている時間がないため、“緊急避難”としてブロッキングを行うべきだという主張があります。漫画家などの著作権者にとって、緊急性があると感じる問題なのは理解できますが、現状では漫画村によってどれだけ漫画本の売り上げが減少したのか、その因果関係を明確に示すデータはありません。漫画村だけを問題視して、政府による立法を待たずにいきなりブロッキングを行うことには疑問が残ります。実際にはどのような状況にあるのかを客観的に示すデータがなく、ブロッキングを行うサイトの明確な基準がないままにこの施策が推し進められると、政府の権限であらゆるサイトがブロッキングできてしまうことになり、中国のように検閲がまかり通るネット環境になってしまう恐れもあります」

 この問題に対し、諸外国では最低限、立法等の手続を踏んでおり、日本ではルールなしで政府の裁量で実施しようとしていることに議論がされている。

 また、欧州で児童ポルノサイトにブロッキングされた例が挙がることもあるが、小杉氏は漫画村と児童ポルノサイトでは「保護される法益が異なる」と指摘している。

「児童ポルノサイトの場合は現実に性犯罪の被害者がいて、しかも訴えることが困難であることから、緊急性があると判断されるのは納得できます。しかし、漫画村のブロッキングによって保護しようとしているのはあくまでも著作権であって、児童ポルノとは法益侵害としての深刻度が異なります。いくら事態が深刻であっても、私的な権利である著作権を保護する目的で政府によるサイトブロッキングができるのであれば、その適用範囲はかなり大きいものとなり、あらゆるサイトがその対象となりえます。例えばですが、政府に批判的で名誉毀損にあたるからブロッキングを行う、ということも起こるかもしれません」

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