坂口健太郎、“影の魅力”引き出す『シグナル』 ドラマ評論家が映像技術と映画的演出を分析

坂口健太郎主演『シグナル』の演出を読む

 坂口健太郎が連続ドラマ初主演を務めるドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ/関西テレビ)が10日より放送開始し、その重厚でダークな絵作りと、役者陣のシリアスな演技、緊張感のある展開に早くも注目が集まっている。

 『シグナル』は、2016年1月から3月までエンターテインメントチャンネル『tvN』で放映されて大ヒットした韓国ドラマのリメイク作品。坂口健太郎演じる三枝健人は、独学でプロファイリングを学んだ警察官で、兄が自ら命を絶つ原因となった事件について、いつか真相をつかもうとしている。ある日、廃棄されるはずの無線機から声が聞こえ、それが自分と同じ事件を追う“過去の刑事”からの通信であることに気付いた三枝は、彼と協力して未解決事件を解き明かしていく。

 10日に放送された第1話では、三枝が小学生のときに目撃した同級生の誘拐事件についての手がかりが無線を通して知らされ、時効間際で長谷川京子演じる真犯人にたどり着くまでが描かれた。暗く沈み込んだ色調は、韓国のホラー/サスペンス映画を彷彿とさせる仕上がりで、Twitterではそのクオリティを評価する声も多い。ドラマ評論家の成馬零一氏に、本作の演出のポイントを聞いた。

「同枠で放送されてきた関テレ制作のドラマは、2017年の春から放送された『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』あたりから、ほかのテレビドラマと異なる色調の絵作りを行うようになってきていて、『シグナル』ではさらにその傾向が強まっています。テレビドラマには、現場での照明の感じをそのまま撮ったような仕上がりの作品が多いですが、本作は色味や彩度や明るさを調整して、より映画に近いトーンに仕上げている。ここ10年で急激に進化している新しい機材や技術を積極的に使っている印象で、冒頭のドローン撮影などはその最たる例でしょう。これは制作会社としての側面の強い関西テレビが主導で作っているからこそ、実現できたのではないでしょうか。以前から制作会社主導の深夜ドラマなどでは、岩井俊二や大根仁といったクリエイターがそうした実験的な絵作りに意識的でしたが、民放のプライムタイムのドラマでこのような仕上がりの作品は珍しいと思います」

 映像のトーンは、演出や芝居にも影響していると、成馬氏は続ける。

「映像のトーンに合わせて、効果音やBGMをあまり使っていないのも効いていて、物語を通して緊張感を持続させることに成功しています。また、役者の芝居も抑制が効いたものになっていて、それが主人公の坂口健太郎を魅力的に見せることにも繋がっている。坂口健太郎は、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』でブレイクして以降、ポピュラリティを獲得して爽やかな好青年という印象が強くなっていたと思いますが、今回の三枝健人のような影のある“ちょっと怖い人物”こそが彼の役者としての実力を引き出し、絵的にも映えるのではないかと」

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