WebCassette、Wave、KORG Gadget for Nintendo Switch…進化するサウンドアプリ

 ハード/ソフトの区別なく、音楽系のアプリケーションの進化が止まらない。2018年になっても、多くのアプリが発表されている。ここでは、特徴ある3つの製品を取り上げ、サウンド系アプリがどのような未来へ向かっているのか、その傾向を分析してみる。

「WebCassette」

WebCassette

 「WebCassette」はブラウザ上で動くアプリケーションだ。自分の好きなオーディオファイル(mp3、wavなど)をカセットテープ風の音で再生してくれる。開発元はスウェーデンのデベロッパー・Klevgrand。UIはシンプルで、見た目はカセットデッキのようだ。

 以前から、スマートデバイスではカセットテープを模したアプリが登場していたが、それほど普及したとは言えない。ハードとしては、アナログ盤の再興によりレコードプレイヤーが売れていたり、ラジカセも根強い人気を誇っている。ユーザー側のニーズがあれば、「WebCassette」のような、アナログをシミュレートした製品が今後もさらに増えていくだろう。

「Wave」

「Wave」

 「Wave」は指輪型のウェアラブルMIDIコントローラーだ。開発はアイスランドのベンチャー・Genki Instruments。まだ商品化はされておらず、クラウドファンディングサービス「Indiegogo」で支援を募集している最中だ。製品の出荷は2018年12月を予定している。

 「Wave」は手の指にはめて使用する。Bluetoothを通し、指の動きによってMIDI信号を送信して「GarageBand」や「Ableton Live」などのDAWソフトを制御できる。思いのままに楽器を演奏するにはそれなりの練習が必要だ。それが今まで、音楽を始めるための大きな壁にもなっていた。ウェアラブルは楽器を弾けない層に、音楽を演奏する楽しみを与えてくれるきっかけとなる可能性を秘めている。

「KORG Gadget for Nintendo Switch」

「KORG Gadget for Nintendo Switch」

 「KORG Gadget for Nintendo Switch」は、KORG社が開発した仮想音楽制作スタジオを「Nintendo Switch」で利用できるソフトだ。16個のシンセサイザーやドラムマシンで、1人から最大4人まで、ゲーム感覚で楽しめる。

 ゲーム機を使用した音楽作成ソフトは以前にもあったが、これほどまでに高性能なソフトは初めてかもしれない。“おもちゃ”の域を超えていると言える。ハードのスペックが上がったことも、その一因だろう。何よりも魅力的なのは多人数で遊べる点だ。

 これらの新しい製品の特徴はそれぞれ、「WebCassette」が音を聴く、「Wave」は音を奏でる、「KORG Gadget for Nintendo Switch」が音で遊ぶ、と分類できる。どれも当然の話かもしれないが、音を楽しむための重要な項目だ。これまでのアプリでは3つのバランスがおざなりにされていたように感じる。コンシューマー向けのハードとソフトの発展が、今後の音楽業界には必要不可欠だ。誰もが音楽制作を楽しめるようになれば、音楽をより身近な存在として捉える裾野が広がっていくだろう。

■吉川敦
フリーライター。音楽と言葉が大好物。憧れの人物はアインシュタインとエルキュール・ポアロとアンディ・ウォーホル。

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