ナノテクノロジーがヒーローを変える? 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』スーツを考察

ナノテクノロジーがヒーローを変える?

 日本とアメリカのヒーロー物の違いについて、いわゆる”変身”の概念が異なる、という説があります。

 例えばウルトラマンや仮面ライダーは”変身”することで、”人間”が”超人”になり、まったく別の存在になります。それに対して、アメコミのヒーローの場合、”変身”というより”着替え”に近い。例えばスーパーマンことクラーク・ケントはもともと超人で、ヒーローとして活躍する時に、スーパーマンというアイデンティティが必要だから、あのコスチューム姿になるわけです。ただクラークがワイシャツをはだけると胸にSの字マークが現れる描写は、とてもかっこよく、ウルトラマンの変身に勝るとも劣らないカタルシスがありますが。

 もちろんアメコミにもハルクやシャザムのように、常人が全く別の超人に変身する者もいます。一方、アイアンマンやアントマンは、そのスーツ自体にすごいパワーがあり、それに着替えることで、超人になる。また最近の映画版のスパイダーマンは、もともと超人的な肉体を持っているけど、さらにハイテク・ギミックいっぱいのスパイダースーツ、ヒーローとしてスペックが増す、という展開になっています。なので、アメコミも”ヒーロー姿になることで、超人化する”という、日本のヒーロー物の”変身”に近い”着替え”のパターンも出てきました。

 そして今回の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、より”着替え”が”変身”に近づいてきました。今回のアイアンマンとスパイダーマンのスーツは、ナノテクノロジーの力で瞬時にスーパーヒーロー化するのです。ナノテクノロジーの現実的な定義や概念はさておき、SF映画等で描かれる場合、分子や原子レベルの大きさの小さな機械=ナノマシンが瞬時に組み合わさって、様々なものを作り出す、みたいな感じです。『ターミネーター2』という映画で、身体を自由自在に変身・変形できるロボットが登場します。あの時は身体が液体金属というコトバが使われていましたが、あれもナノテクノロジーの一種です。

 『アイアンマン』の1作目から観ていると、もともとアイアンマン・スーツは鎧のようなもので、それを装着するような感じだったし、『スパイダーマン:ホームカミング』で描かれたスーツも、ハイテクとはいえ、ジャージに着替えるみたいなノリでしたが、今回は、瞬時に身体がナノテクノロジーに覆われ、ヒーローとなる。そういえば日本の特撮ヒーロー”宇宙刑事シリーズ”も、”蒸着”という概念でヒーロースーツを瞬時に身につける、という着替え=変身だったので、今回のアイアンマンは、それに近い感じ。しかもアイアンマンの場合、シチュエーションに応じて、手が重火器になったり足がロケット化する。本作のアイアンマン・スーツは マーク50(50代目のスーツ)と呼ばれています。『アイアンマン』1作目に登場するマーク1は、本当に”鉄の鎧”でしたから、この2つを見比べてみても、アイアンマン・テクノロジーの劇的進化がわかるでしょう。

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