MONKEY MAJIKが語るハイブリッド音楽論「ポップスにはルールがなくて、生き物のように変わる」

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 仙台を拠点に活動するMONKEY MAJIKが、来年のデビュー15周年に向けて、シングル『夏の情事』をリリースした。2007年発売のシングル『Change』以来となる吉田兄弟とのコラボレーションを果たした同作は、艶やかな三味線の音色がひと夏の“情事”を表現している彼らの意欲作だ。今回リアルサウンドでは『夏の情事』の制作過程や、日本のポップス文化への考察、サウンドプロダクションへのこだわり、さらには海外ツアーやプライベートで聴いている音楽などについて、メイナード(Vo/G)とDICK(B)の二人に大いに語ってもらった。

「吉田兄弟は三味線のピカソだと思う」(メイナード)

――MONKEY MAJIKは来年でバンド結成15年周年ということで、今年からいろいろと動きがあるのではと期待しています。そんななかで届いたニューシングル「夏の情事」は、吉田兄弟とのコラボ作品ですね。

メイナード:「CHENGE」(07年4月リリース/吉田兄弟とのコラボ曲)から親しくなって、よく遊んでいたんです。また一緒にやりたいと思っていて、12年に北米ツアーを回った時の打ち上げで「やろうよ」と話して。それで今年、NHK仙台放送局でラジオ番組をはじめて、第一回目のゲストに吉田兄弟を呼んだんですよね。そのとき、健ちゃん(吉田健一)から、「前ノリしていい?」という電話があって。ちょうどふたりのアルバムを聴いていたところで、「じゃあ飲もう。三味線持ってきてよ」と。僕もギターを持って行って、そこでジャムセッションをしたら曲ができたんです。

DICK:イントロの“もう一回、もう一回、はいゴー”という掛け声は、居酒屋での会話なんですよ。リフなんかも、居酒屋でのセッションをベースに作りました。三味線は湿気に弱い楽器なんですけど、おまかせコースで鍋が出てきて、湯気がボワーって(笑)。

メイナード:ふたりとも、さすがに鍋からはちょっと離れてたね(笑)。

――大人のラブソングというか、セクシーな想像も膨らむ曲になっていますが、歌詞も居酒屋でできたんですか?

DICK:歌詞のテーマは「夏」ですね。

メイナード:夏と言えばみたいなところで、「情事」という言葉が出てきたんですよ。

DICK:普通の会話ではあんまり使わないフレーズだけどね。

――少し懐かしさを感じる言葉ですよね。独特の風情があって、全体のストーリーも一晩の盛り上がる気持ちのようなものが表現されています。

メイナード:ふたりの仲が本当に深まるのは、少しあとの話で。情事にあたる部分は、三味線のソロパートなんですよ。

――あえて言葉にしないと。三味線の音が「CHENGE」とはまた違っていて印象的でした。

メイナード:「CHANGE」のときのコンセプトは「三味線+ロック」で、いままでにないものを作りたかったんです。そして今回は、比べるものがないような音にするのが裏テーマで、ぜんぜん違うものにして。こういうゆったりとしたテンポだと沖縄の三線みたいに聴こえがちなんですけど、特にソロパートは津軽三味線にしか出せない音で、ふたりが本当にがんばってくれました。

DICK:三味線は三線の真似ができるけど、逆はできないと思う。

――ふたりにとって、吉田兄弟の音楽の魅力は?

メイナード:和楽器を使って、しっかりした基礎を持ちながら新しいことに挑戦する…というのは、彼らにしかできないことだと思います。彼らのテーマはきっと「和楽器をみんなに聴いてほしい」ということではなくて、日本文化をもっとトータル的に世の中に届けているんですよね。ラスベガスでショーをやっているのかと思うくらい、才能とセンスを感じる。

DICK:なんの予備知識もなくても「カッコいいな」と思える演奏をしますね。

メイナード:伝統文化だからやってはいけないこともあると思うんですけど、そのなかでもチャレンジをする勇気がカッコいい。もともとはリアリストペインターで、モダンアートとして認められたピカソを思い出しますね。吉田兄弟は三味線のピカソだと思う。

――MONKEY MAJIKの音楽にも通じる話ですね。日本語ポップスの要素を楽曲に取り入れて、他にないものを作り上げていると思います。

メイナード:ポップスにはルールがなくて、生き物のように日々変わっていると思うんです。だから、日本に住めば当然、その影響を受けて変わるし、スウェーデンに住めばそれっぽいポップスを作っているかもしれない(笑)。僕らはカナダ人だから、日本にいれば毎日いろんな発見があって、ラッキーだと思います。

DICK:カッコいいと思うアーティストは、日本という枠にとらわれていない人が多いかな。山下達郎さんなんて、日本っぽくないと思う。

メイナード:僕らは演歌っぽい曲もたまに作るんですよ。どんなものにも壁を作らないのが僕らの強みかもしれない。文化って、邪魔になるときもあるから。音楽だけじゃなくて、どんなアートでも。

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