9mm Parabellum Bulletが「クアトロA面シングル」で見せた、4人4様のプロデュース力

 怒涛の9周年、10周年を駆け抜けたかと思いきや、2014年末の滝善充(G)が足と手を相次いで骨折したことによって、半年間のライブ活動休止を余儀なくされた9mm Parabellum Bullet。そして6月の自主企画「カオスの百年 vo.11」からライブ活動を再開し、このたび遂に9か月ぶりに新作がリリースされる。さらにリリース日は9mmの日である9月9日。9だらけで縁起がいいぜ!

 しかもこのニューシングルは、「クアトロA面シングル」なのだ。見慣れない言葉にどういうこっちゃ?と思うが、これはメンバー4人がそれぞれ作曲/プロデュースを担当しており、4曲全曲がA面であるということ。通称“ピザ盤”だという。完全受注生産限定Special Editionは、オリジナル・ピザBOX仕様で、4種のトッピング(封入特典)付きって、完全に楽しんでいるじゃないか! しかし、こういったアイディアが広がっていくのも、4人全員が作曲できて、4人全員にプロデュース能力があるからこそなし得ること。こういったバンド、日本の中ならL'Arc~en~Cielがパッと思いつくけれど、そんなに数多くいるわけではない。全員のキャラクターが立っているバンドや、全員の演奏力が高いバンドはいるけれど、そこから作曲やプロデュースといったところまで手を伸ばせるかというと、そうはなかなかいかないのだろう。

 9mmのような異端なままロックシーンの中枢にまで駆け上ってしまったような個性的なバンドが、そういったスキルを開花させたということは、ますます予測不可能な進化を遂げていくという宣言にも見えるわけで、久々のシングルに相応しい。また、CD、特にシングルが売れない時代に、しっかりと意味を持たせてリリースするというところや、9mmのバンドの特性を明確に表した、名刺代わりの一枚を完成させたところなど、パッケージだけでも、今作が物語ることは大きい。さらに楽曲を掘り下げていくと、ますます重要なアイテムであることが露わになってくるのだ。

 まず1曲目は、滝作曲の『反逆のマーチ』。うねうねとギターが踊るイントロでまず脳裏に浮かんだ言葉は、暗黒サンバ。今まで9mmの作曲とプロデュースは彼が中心に行っていたため、彼が手掛けたこの楽曲は9mmのど真ん中と言えるはずなのだが、とても新鮮に聴こえてくるのだ。3人に刺激されたところも大きかったのでは? そして2曲目は中村和彦(B)作曲らしく、イントロからベースがブリッブリに暴れる『ダークホース』。ストレートなハードロックが基盤なので、個々のプレイのスパイスが際立って「らしさ」が浮き彫りになっている。3曲目は菅原卓郎(Vo・G)作曲の『誰も知らない』。《余計なものほど欲しくなるもんさ/気付いた時にはいらなくなるんだ》という歌詞もあるけれど、全般的に、音がとても削ぎ落とされている。かと言って、シンプルと片づけられるような単純な構造ではなく、音色やコードに気を配って、引き付けるような楽曲にしたことが伝わってくる。4曲目は、かみじょうちひろ(Dr)が作曲だけではなく作詞も手掛けた『Mad Pierrot』。ストーリー性のある歌詞と悲しげでファンタジックな曲調が相俟った、確固たる世界観を持った楽曲である。……こうして書き連ねていると、4人とも、持っているスキルがいちプレイヤーとしてだけのものではないのだな、と改めて思う。また、全員が9mmという受け皿を心から信頼しているからこそ、各々が個性を生かしたバラバラなことをぶつけられるのだろう。

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