氷川きよし新曲のサウンドにみる、歌謡曲とスペイン語圏音楽の関係

参考:2015年09月28日~2015年10月04日のCDアルバム週間ランキング(2015年10月12日付)(ORICON STYLE)

 はじめまして、今回からチャート分析を担当することになりました音楽評論家の宗像明将です。

 私はオリコンチャートを見て育ってきた世代で、現在はオリコンの個人向け有料会員サービス『you大樹』の会員でもあるのですが、見る情報と言えば好きなアーティストのランキングや売り上げ枚数ばかりなんですよね。だから今回、「これが今週のチャートだ! どれか選べ!」と編集部から言われて、改めてチャートを上位から眺めたとき、A.B.C-Zの『Moonlight walker』が1位であることには違和感がなかったものの、2位が氷川きよしの『愛しのテキーロ / 男花(シングルバージョン)』であることには驚きました。演歌のチャート・アクションに対する既成概念を破壊しています。

 取り上げるのなら、凝ったMVも話題になっている9位のサカナクションの「新宝島」かな……と思いつつ、ベスト10を全曲聴いてみたところ、氷川きよしの「愛しのテキーロ」はいきなりのフラメンコ歌謡だし、4位のE-girlsの「Dance Dance Dance」はサビ以外はファンクという楽曲構成だしで、なかなかの発見がありました。総合的なインパクトの強さにより、今回は2位を獲得した氷川きよしの『愛しのテキーロ / 男花(シングルバージョン)』を紹介します。いきなり演歌です。

 作曲は、AKB48グループ関連楽曲やアニソンへの楽曲提供でも活躍するYORI。彼女によるキャッチーにして愁いを帯びたメロディーを、氷川きよしが色気たっぷりに歌いあげているのですが、その「色気」とは要は細部におけるヴォーカル・コントロールの巧さが生み出しているものなんですね。たとえば「テキーラ」という言葉を何度か歌うにしても、ある箇所では吐息混じりのように歌ってみせる。このあたりの技芸はさすがです。

 そして「愛しのテキーロ」の大きな魅力は、中山聡の編曲によるサウンド。アコーステック・ギターの独奏、そこに流れ込んでくる流麗なストリングス、そしてハンドクラップ……。ストリングス・アレンジは、演歌を多数手がけ、氷川きよし作品でもおなじみの石倉重信。ある種、扇情的と表現したくなるほどツボを押さえたストリングス・アレンジです。そして、「下世話」と表現したくなるほど際立っている女声コーラスも含めて、「演歌」というよりは「歌謡曲」と呼ぶのがふさわしい楽曲に仕上がっています。

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