今井美樹がデビュー30年でたどり着いた場所とは? 東京国際フォーラム公演の音楽的成熟を分析

今井美樹、国際フォーラム公演レポ

 デビュー30周年を迎えた今井美樹の全国ツアー『30thAnniversary CONCERT TOUR 2015 “Colour”』の東京公演が、10月23日、東京国際フォーラム ホールAで行われた。今年5月にリリースされた20枚目のオリジナルアルバム『Colour』がオリコン週間ランキングベスト10入りを記録し、今年10月にリリースされ、11年4か月ぶりのオリコン週間ランキング3週連続ベスト10を記録するなど、ロングセールスを継続中のオールタイムベストアルバム『Premium Ivory ーThe Best Songs Of All Timeー』。この2作品を中心にしたこの日のライブで彼女は、30年のキャリアを網羅しつつ、“2015年の今井美樹”を飾ることなく表現してみせた。

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 今回のツアーは2部構成。最新曲「Anniversary」からスタートした第1部は、最新アルバム『Colour』の収録曲と「ふたりでスプラッシュ」(1987年)、「野性の風」(1987年)などの懐かしい曲を織り交ぜ、過去と現在を行き来するような内容。女性の生き方、ライフスタイルをテーマにした楽曲の世界を描き出すボーカルからは、彼女の表現力がさらに深まっていることが伝わってきた。バンドメンバーは河野圭(Key)、川江美奈子(Cho/Key)、井上富雄(Ba)、黒田晃年(G)、鶴屋智生(Dr)。70年代後半から80年代のニューミュージック、AORのテイストを軸にしたシンプルで上質なサウンドも魅力的。まさに大人の鑑賞に堪える音楽だ。

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 2012年からロンドンに移住した今井。客席からの「おかえり!」という声に応え、「そうよね。東京は私の人生のいろいろなものが詰まった場所。心から“ただいま”という気分です」と嬉しそうな笑顔を浮かべた。

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 第1部のラストは自身が主演したドラマ『ブランド』(フジテレビ系)の主題歌「Goodbye Yesterday」(2000年)。「50歳になったら、大きなステージで歌いたいと思っていました。2年過ぎちゃいましたけど」というコメントも印象的だった。こういう飾らない性格もまた、彼女が同性から支持され続けている理由なのだろう。

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 第2部のオープニングは代表曲「PRIDE」。イントロが流れた瞬間にどよめきにも似た歓声が起こり、ハンカチで目元を抑える女性客の姿も見受けられる。布袋寅泰とのコラボレーションにおける最高傑作とも言えるこの曲は、いまもなお幅広い世代の心を捉え続けているようだ。

 また、初期の今井美樹の音楽を支えてきた上田知華(作曲)、岩里祐穂(作詞)による「再会」、そして、「彼女と出会ったことから、また新しい音楽と巡り合えました」という川江美奈子のペンによる「あなたがおしえてくれた」(どちらもアルバム『Colour』収録)も強く心に残った。年齢、人生の変化を楽曲に反映させながら、長きに渡って同世代女性の共感を得て来た彼女。この2曲からは30年という時間を経て辿りついた音楽的成熟が確かに感じられた。

 アンコールでは彼女がもっとも影響を受けたアーティストである荒井(松任谷)由実の「卒業写真」を披露。さらに1991年のヒット曲「PIECE OF MY WISH」によってライブはエンディングを迎えた。

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