天才バンドの“普遍的なロック”はどう生まれたのか「淡々と、真摯なものが4分間に詰まってる」

天才バンドの楽しさとせつなさの由来

 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団での活動のほか、CM音楽への歌提供や弾き語り等のライブ出演など、あらゆる方面からひっぱりだこの「魔法の声を持つシンガー」、奇妙礼太郎。ワンダフルボーイズのボーカリストかつ音楽的支柱であると共に、ピアノ弾き語りやベーシストなど、多岐にわたって活動中のSundayカミデ。奇妙礼太郎トラベルスイングバンドのドラマーでもあり、fugacityなどほかのバンドでもプレイするテシマコージ。この3人からなる天才バンドの2ndアルバム『アリスとテレス』が11月4日にリリースされた。

 1曲目から9曲目までが通常の方式でレコーディングされた曲、10曲目から15曲目まではSundayカミデがピアノからベースにパートをチェンジ、歌詞も含めてオールアドリブで3人でジャムセッションしたさまが収められている。聴き手によって解釈の分かれようがない、人としゃべってる時そのままみたいなストレートきわまりない言葉を、素朴の極地みたいなメロディに載せて、怒濤の如きせつなさや切実さを描き出すSundayカミデの楽曲を奇妙礼太郎という類稀なるボーカリストが歌った時の衝撃を味わえるのがアルバム前半、この3人が奏でるロックンロールの自由さや楽しさを満喫できるのがアルバム後半、ということだ。結成までふり返って、奇妙礼太郎の歌の魅力、Sundayカミデのソングライティングの秘訣について、3人にお話しいただいた。(兵庫慎司)

「Sundayさんの曲を歌った作品を残しときたいなと思って」(奇妙礼太郎)

ーーすみません、2枚目のアルバムのタイミングで訊くことじゃないんですけど、そもそもこのバンドをやろうという動機は?

奇妙礼太郎(以下、奇妙):僕がSundayさんの曲を歌った作品を残しときたいなと思って。それが最初のきっかけですね。で、スタジオ入って録音してる時に、「アルバム作るんやったらライブするのもいいかもしれない」「じゃあバンド名つけよう」みたいなことで、始まって。

ーーSundayさんの曲を自分が歌ったものとして残しておきたいと思ったのはなぜでしょう?

奇妙:うん……なんでかな。まあ、好きなんですね。すごいと思ってて。

Sundayカミデ(以下、Sunday):1枚目を出す前から、僕が作った曲の8割ぐらいを歌えるんですよ、奇妙くんは。だから、「8割歌えるんやったらアルバムできるよね」みたいな話になったよね? ふたりでアコースティックライブをしたり、そのライブでお客さんにお題をもらってその場でセッションで歌を作る、っていう遊びをしてたりして、いろいろふたりでやっていくうちに、奇妙くんが僕の曲を覚えて、自分のソロの時にも歌ってる、みたいな感じが何年かあったんで。それで曲も貯まって、それやったら1枚残しますか、みたいな。

ーーで、テシマさんが呼ばれて?

テシマコージ(以下、テシマ):はい。ヒマやったんで。

Sunday:えーとねえ、テシマを呼んだのって……(奇妙に)憶えてる?

奇妙:いや……勝手に来たんちゃうかな。

Sunday:(テシマに)誰に誘われた?

テシマ:いやいやいや、ふたりに!

Sunday:ええ? 俺、奇妙くんが連れてきたと思ってるけど。

テシマ:いや、僕がそん時バイトしてた店にふたりが来て、呼び出されてーー。

奇妙:……ああ、酔っぱらってたかな。

テシマ:はい。で、「来月ぐらいにアルバム作るから」「うぃっす」みたいな。

Sunday:ああ、「ドラムしてくれよ」みたいな感じで、ふたりで言ったんや?

テシマ:はい。

奇妙:バナナあげるよって?

テシマ:いやいや、ほんまっすよ! 「3人でバンドするから」って。夜中1時くらいに。

奇妙:そう思いたいんやったらいいよ、それで。フフフ。

Sunday:……でも、店に行ったのは憶えてるわ。誘ったのは憶えてないけど、最後にテシマが奇妙くんをタクシーに乗せたことは憶えてる。最後、奇妙くんがほとんどミイラみたいな感じになってて(笑)。

ーーでも、バンドだからギターとベースとドラムが必要、っていう発想じゃないですよね、現にベーシストいないし。だから、ドラムというよりも、テシマさんが必要だったのでは。

奇妙:後輩がいないと、「誰がコーヒー買いに行くんだろう?」とか。

Sunday:とかね、カバンとか持ってもらいたいって気持ちもあるし(笑)。

奇妙:うれしいよね、あれね。

Sunday:うれしいなあ、あれ。めっちゃええドラム叩いてくれた時と、すぐカバンを持ってもらった時、同じぐらいうれしい(笑)。

テシマ:笑ーーー!!!

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