検索しても出てこない『FINAL』の核心 TM NETWORKの30年の軌跡を辿る

TM NETWORK30年の軌跡を辿る

 集大成。小室哲哉はそう言った。このたび発売された『TM NETWORK 30th FINAL』に収録されているコンサートの終演後だった。その言葉を心にとめ、Blu-ray Discを今一度見直す。30年の軌跡に点散するさまざまな出来事が甦る。まさに集大成だ。

 たとえば冒頭のプロペラ機。甦るのは公演まで1週間を切った某日の青空。小室哲哉のクルマに同乗させてもらい、東京から北へ約2時間。スタイリストはスニーカーも準備していたが、小室哲哉が手に取ったのはブーツ。ぼくの顔に「そっち!?」と書いてあったのか、目が合うと言った。「せっかくだから。あまり履かないブーツのほうが、たったこれだけでも、喜んでもらえるから」。スケジュール的に過酷だろうと、撮りたい画を撮るクリエイター魂と、たとえ一瞬だろうと、観客に驚きを提供しようとするサービス精神が、この人の変わらぬ両翼なのだと確信した。

 たとえば飛行機の形の風向計。甦るのは黙々と撮る小室哲哉の姿。空撮を終え、滑走路を出ようとしたとき、いきなりそれは始まった。飛行場だから、時間的制約がある。が、「そろそろ…」「時間が…」なんてスタッフの声が一切聞こえていないかのように撮り続ける。クリエイターのスイッチがONになったのだろう。

 たとえば「Children of the New Century 2015」から「Here, There & Everywhere」への狭間。宇都宮隆が「ELECTRIC PROPHET」の冒頭を歌ったような、歌わなかったような…。当日のリハーサル中、実は木根尚登にこっそり尋ねていた。「あのさ、エレプロの頭のコード、どうだっけ?」。近くにいた葛城哲哉にもその内緒話が聞こえていたらしい。

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