[Alexandros]、初のアルバム首位獲得! 彼らが体現するロックバンドとしての新しさとは

参考:2016年11月7日~2016年11月13日週間CDアルバムランキング(2016年11月21日付)(ORICON STYLE)

 約1カ月前、前回の連載冒頭で触れた宇多田ヒカル『Fantôme』とRADWIMPS『君の名は。』が引き続きトップ10圏内にランクイン。「ヒットが生まれない」が枕詞になっていたここ数年の音楽シーンにとって、単なるセールスのみならず話題の広がりも含めて「ヒット」と呼べるような作品が立て続けに生まれている2016年は、10年先に振り返った時に転換点の一つとして刻まれているのかもしれない。『Fantôme』はレコード大賞の最優秀アルバム賞を獲得し、まさに名実ともに今年のヒット作として認定された。優秀作品賞にもノミネートされている「花束を君に」とのダブル受賞はあり得るのだろうか? 宇多田ヒカルの復活を祝い、かつシングルでのフィジカルリリースのない曲が大賞をとるというラディカルな結末を迎えてこそ、レコード大賞も新しい時代に突入できると思うのだが……。

 さて、今週取り上げるのは初登場1位を獲得した[Alexandros]の新作『EXIST!』。自己最高の初動となる約6万枚のセールスで、バンドとして初めての週間チャート1位獲得となった。すでにフェスでは大きなステージの常連となっているので「初」というのは少し意外だったが、多数のタイアップ曲などを通してバンドの存在がより広い場所へと伝わりつつあるということだろうか。

 メジャーなフィールドで人気を獲得するロックバンドはそれこそMr.Childrenから前述のRADWIMPSまで様々な存在がおり、[Alexandros]もそこに名を連ねたことになるが、個人的に興味深く感じているのは彼らの支持における歌詞の比重である。マスに広がっていくバンドの多くは「泣ける歌」「人生の深さを感じられる歌」といった相田みつを的な消費も孕みながら人気と知名度を獲得していく印象があるが(パンク~メロコア系のバンドは英語詞も多いのでその限りではない)、このバンドからはあまりそういうムードが感じられない。もちろん歌詞が良くないというわけではないし前述のとおり英語詞が頻繁に登場するのもその理由の一つだと思うが、サウンドや佇まいなどを含めたトータルでのバンドのあり方が評価され続けた結果として今の地位があるのだとすれば、もしかしたらラウド系統ではないロックバンドとしては新しいケースなのかもしれない。

 そんな上り調子の[Alexandros]だが、新作『EXIST!』に浮ついた空気は全くない。「フェスで人気」という類のキャッチコピーから想起される音とは印象が異なる、バラエティ豊かで聴きごたえのある世界が展開されている。アコースティックギターとピアノから始まる軽快さと壮大さを併せ持った「ムーンソング」にはコールドプレイのようなスケールがあるし、ギターポップ調の「Feel like」(コーラスがめちゃくちゃおしゃれ)から80sのダンスチューン的な趣を感じる「Aoyama」につながるカラフルな流れからはポップス職人的な巧みさも感じさせる。

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