パスピエが表現した、バンドとしての“最新バージョン” 「5年間の遺伝子が形になってきた」

パスピエが表現したバンドの最新バージョン

 2017年1月25日、パスピエが4thアルバム『&DNA』をリリースする。2016年リリースされたシングル『ヨアケマエ』『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』『メーデー』を含む全12曲を収録した本作は、80sニューウェイブ、和の要素を取り入れたメロディといった従来の個性をさらに進化させながら、サウンド、歌詞、演奏のすべてにおいて新たなトライアルを反映させた充実の仕上がり。「“バンド・パスピエ”として、いちばん新しくて、いちばん良いものが今回のアルバムだと思う」という成田ハネダ(Key)のコメント通り、現時点におけるパスピエの最高傑作と言っていいだろう。

 今回はメンバー全員にインタビュー。2015年12月の日本武道館公演以降の意識の変化、シングル3作からアルバムへの流れ、メンバーの役割が明確になったというパスピエの現状などについて語ってもらった。(森朋之)

いちばんソリッドな音作りを意識した(成田ハネダ)

ーー4thアルバム『&DNA』が完成しました。間違いなく最高傑作だと思いますが、まずはメンバーのみなさんの手応えを教えてもらえますか?

大胡田なつき(以下、大胡田):まだ「『&DNA』というアルバムが出来たんだな」ということしかないですね(笑)。ぜんぜん気持ちが追い付いてないです。

やおたくや(以下、やお):出来たばっかりだからね(笑)。デビューからほぼ1年に1枚のペースでアルバムを出してるんですけど、常にいちばん良い作品を目指していて。いま「最高傑作」って言葉にしてもらって、感慨深いものがありますね。

三澤勝洸(以下、三澤):2016年はシングルのリリースが多くて。その4曲が柱になってくれたおがけで、いままでよりも自由に制作できた印象もあります。盛りだくさんのアルバムになったと思いますね。

露崎義邦(以下、露崎):毎作ごとに違った感覚があるんですけど、今回のアルバムに関しては、以前よりもすんなり出来たというイメージがあって。5周年を迎えられたことも自信になっているし、アレンジ、ミックス、マスタリングを通して、迷うことが減ってきたのかなと。

ーーなるほど。アルバムの制作前、成田さんのなかではどんなビジョンがあったんですか?

成田ハネダ(以下、成田):そうですね……。2016年はシングルのリリースが続くことが決まっていたので、それをどう見せていくかというところから始まっていて。以前のインタビューでも話したと思いますけど、シングル3作を通して“対”というテーマがあったんですね。そのうえでアルバムとしての重みをしっかり伝えたいという気持ちもありました。あとは「バンド・パスピエとしての最新バージョンを作る」ということですかね。

ーー“バンド・パスピエ”というと?

成田:アルバムの制作では、ライブでは再現できないこともたくさん出来るじゃないですか。いままでのアルバムはそういう“実体かどうかわからないおもしろさ”を意識して制作してきたんですけど、今回は“バンド・パスピエ”が出来る、いちばんソリッドな音作りを意識して。このメンバーで出し得る、いちばん新しくて、いちばん良いものが今回のアルバムだと思います。

やお:(アーティスト写真、MVなどのビジュアルに)顔を出してから初めてのアルバムということも影響してると思いますね。意識の変化が出ているというか。

大胡田:顔を出したことで、逆に「ここはボカしてもいいのかな」という部分も増えた気がするんですよね。聴いてくれる人に想像してもらうことのおもしろさもあると思うんですけど、私たちの見た目がハッキリわかった分、「歌詞では少しぼんやりさせたほうがいいのかな」という書き方をしてみたり。

ーーいろいろな面で変化があったと。2015年12月の日本武道館ライブ以降、バンド自体も新しいタームに入ってますからね。

やお:そうですね。2015年は武道館に向けて1年間活動していて。あのステージに負けないというか、あそこに立てる資格が持てるようにがんばっていたんですよね。それを超えたことで、大胡田にも「少しは任せられるようになってきた」って言ってもらったり(笑)。

大胡田:インタビューのときの話ですけどね(笑)。ふだんからそんなこと言ってるわけではないので。でも、安心して任せられますよ。

やお:バンドとして地が固まったというか。今年は楽曲の制作にもしっかり集中できましたからね。

三澤:気持ちの上でも、ひとつのタームが終わる感じがあって。2016年の年始は「ここから新しいことをやっていこう」という意気込みもあったし、そこから1年間がんばってきた結果が今回のアルバムなんだと思います。

露崎:そういう積み重ねが、いい意味でプレッシャーになったところもあって。辛いとかではなく、わかりやすくシャキッとしなくちゃいけないという部分もあったんですよね。その気持ちが根っこにある状態で1年過ごしてきて、このアルバムを作ることが出来て。流れ的には2015年12月22日から地続きだと思います。

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成田ハネダ

ーー成田さんは「2016年は改めて自己紹介していきたい」と言ってましたが、それは達成できた実感がありますか?

成田:自分がやろうと思っていたことは実現できましたけど、それが世の中的にどうかはまだわからないですね。ただ、いままでとは違うアルバムにしようとは思っていました。過去の3作はバンドそのもの見せ方を考えながら、変化球を投げようとしてたところもあって。今回はそこまで肩肘張らずやりたかったんですよね。シングルの“対”というテーマ自体にフックがあるし、その世界観を崩さずに制作していけば新しいものになるんじゃないかなって。『娑婆ラバ』以降、このアルバムからは違う感じになっていくと思いますね。

ーー「&DNA」というタイトルについては?

大胡田:制作が終わってから考えたんですけど、意外とサッと出てきて。

やお:大胡田から「&DNA」というタイトルが下りてきて、全員「めっちゃいいじゃん!」ってなって。即決でした。

三澤:満場一致でしたね。しかも今回のタイトルは回文になっていて。

ーーインディーズ時代のミニアルバム『わたし開花したわ』『ONOMIMONO』、1stフルアルバム『演出家出演』以来の回文を使ったタイトルですね。

大胡田:5周年というのもあって、最初の頃にやっていたことをもう一度使ってみようと思って。最初は「AND DNA」だったんですけど、成田さんに「“AND”は記号(&)がいい」と言われて、この表記になりました。意味としては、5年間活動してきて、パスピエのDNA、遺伝子が形になってきたというか。それが入ったアルバムだと思うんですよね、今回は。

成田:その時期のモードに偏っているというより、いろんなタイプの曲が入っているアルバムですからね。そういう意味では(2ndアルバム)『幕の内ISM』に近いんだけど、さっき言ったようにいちばん新しいことが出来ているし、いままでやったことないことも含めて、全部が入っている感じもあって。

やお:メンバーの信頼感が一段と強まっているのも大きいですね。3人で(やお、露崎、三澤が)ベーシックを録って、それを成ハネがジャッジして、その間、大胡田はずっと家で歌詞を書いて。役割分担がしっかり出来るようになったから、レコーディングもスムーズだったんです。

ーーメンバー自身のプロデュースで進んでいるバンドですからね。外部のプロデューサーを必要しないほどのクリエイティビティをメンバーが持っているというか。

大胡田:確かにプロデューサーって、ぜんぜん想像つかないですね。

やお:何をしてもらえるんだろう?(笑)

成田:まあ、プロデューサーと一緒にやることで、それが自分たちの血となり肉となるんだったらいいんじゃないですかね。いまは考えてないですけど、そういうチョイスが必要だと判断したら、お願いすることもあると思います。

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