「Suchmos以降」の視点で見る、2017年のキープレイヤーたち

 1月25日に発売されたSuchmosの新作『THE KIDS』が素晴らしい。作品自体のクオリティの高さはもちろん、2017年の日本の音楽シーンの未来を照らし出すという意味でも、間違いなく傑作だ。

 改めて、ここに至る背景を振り返ろう。2010年代の日本では、海外におけるファンクやソウルの再評価、国内における渋谷系やシティポップの再評価などを背景に、ブラックミュージックの要素を含んだポップスを志向するアーティストが急増。2015年に発表された星野源の『YELLOW DANCER』と、ceroの『Obscure Ride』という二作品は、その到達点と言うべき作品だった。

 そして、その延長線上で、去年からその動きが顕在化したのが「ブラックミュージックからポップスへの接近」。音大でジャズを学んだメンバーを含むSuchmosは、アシッドジャズやネオソウルをメンバー共通のバックグラウンドとしながら、OasisやNirvanaをルーツに持ち、ポップ/ロックのフィールドにも目線の開かれたYONCEをフロントマンとすることで、ポップス志向を明確化していた。

 前作『THE BAY』は、正式メンバーが6人になって間もない時期に制作された作品であったのに対し、『THE KIDS』はメンバーがたくさんのライブと状況の急激な変化を共有しながら作り上げた、真の1stアルバムだと言っていいだろう。楽曲の軸となっているのがバンドのグルーヴマスターであるベースのHSUであることに変わりはないが、HSU以外のメンバーもそれぞれの個性をこれまで以上に発揮していて、中でも印象的なのがギターのTAIKING。8本のギターを重ねたというオープニングの「A.G.I.T.」をはじめ、要所で現れるメタリックなサウンドがYONCEのロック魂を後押しし、代表曲「STAY TUNE」やライブの定番曲「DUMBO」などで聴くことのできるHSUとのゴリゴリなユニゾンは、もはやSuchmosの十八番となった印象だ。

 また、プレイ面のみならず、各楽器の音色の広がりが作品の充実度に大きく貢献しているのもポイントで、キーボードのTAIHEIはエレピでアーバンな質感を醸し出しつつ、圧のあるシンセでサイケデリックなムードを生み出し、ドラムのOKは軽快な生ドラムの一方で、ヒップホップ的なトラック寄りの音作りも披露。DJのKCEEも声ネタを中心としつつ、「PINKVIBES」ではサックスをネタにしてアシッドジャズな雰囲気を演出している。

 彼らの曲作りは基本セッションで行われているが、以前YONCEとKCEEに取材をした際、「俺たちはそれぞれのパートを入れ替えても、きっと同じような曲ができると思う」と話してくれたことがとても印象に残っている。もともと地元の友達で、YouTubeを囲んで古今東西の名曲を共有してきた彼らは、つまりは音楽の快楽原則を共有していて、だからこそ上記のような発言ができるのだろう。これは言い換えれば、「プレイヤーであると同時に、楽曲に対するアレンジャーとしての目線がある」ということでもあり、もはやジャンルの混在が前提となった今、この感覚はますます重要になってくるように思う。彼らの敬愛するJamiroquaiの7年ぶりの新作と、それに伴う来日公演が発表されたことも含め、2017年がSuchmosイヤーとなることはまず間違いない。

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