「音楽は“ジャンル”ではなく、“思想”なんだ」ACIDMANが届ける揺るぎないメッセージ

ACIDMANの揺るぎないメッセージ

 2016年秋より結成20周年アニバーサリーイヤーをスタートさせたACIDMAN。年をまたぎ開催されている2マンツアーでは、11月からの前半戦にストレイテナー、Aggressive Dogs、SPECIAL OTHERS、Suchmos、2月からの後半戦にthe band apart、Crossfaith、toe、SiM、The BONEZ、 LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS、THE BACK HORNといった世代もジャンルも超えた豪華アーティスト陣を迎えている。このラインナップには、まさに今のACIDMANのバンドとしてのありかたが表されているのではないか。そう感じたのは、1月21日Zepp Tokyoにて開催された彼らのワンマンライブを観ているときだった。

 大木伸夫(Vo/Gt)曰く「会場が空いたから急遽やることを決めた」という、2017年彼らにとって最初で最後となるワンマンライブは、昨年10月リリースのファン投票により選曲されたアルバム『ACIDMAN 20th Anniversary Fans' Best Selection Album 'Your Song'』の楽曲をすべて披露するプレミアムな公演だった。途中のMCで大木が「ベストの20曲、全部やりますよ! 素晴らしい選曲だなと思いましたが、バラードが多い(笑)。どっぷり浸かってください」と告げたとおり、その日のセットリストには、たっぷりと彼らの世界観を感じることができる楽曲が並んでいた。

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 ACIDMANは例年、ロックフェスなどのイベントに欠かせない存在として、集まったオーディエンスを熱狂の渦に包んでいる印象がある。イントロから大きな歓声があがった「今、透明か」や「風、冴ゆる」のような熱を帯びた曲、また「FREE STAR」のような高揚感ある曲など、静と動を組み合わせた爆発力ある楽曲こそ、彼らの持ち味であると感じている人も少なくないかもしれない。しかしこの日の20曲を聴くことで、彼らが実に様々な表情を持つバンドであることを改めて感じることができた。

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大木伸夫(Vo&Gt)

「音楽は“ジャンル”ではなく、“思想”なんだと思った。伝えたいことは、この世界は、この宇宙は広くてあっという間に死ぬ。それは悲しいけれど、それを感じられることが素晴らしい。全てには終わりがある。悲しいこととともに生きると、人生は美しくなる。(「季節の灯」は)そういう曲を作るきっかけになった」(大木伸夫)

 「季節の灯」は、音楽とはどんな曲調であるかということより、どんなことを伝えたいのか、どんな思想があるのかが重要であるということに気づくきっかけとなった楽曲なのだという。その後の「最期の景色」「and world」にも、彼らのその“思想”は強く反映されていた。会場中が熱心な眼差しをステージに注ぎ、噛みしめるように歌詞を口ずさむ。生命の尊さや人生の哲学が込められた、その楽曲自体が持つパワーに観客の心が突き動かされている光景が広がり、バラード中心の選曲だったにも関わらず、終始その熱が冷めることはなかった。

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佐藤雅俊(Ba)
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浦山一悟(Dr)
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 終盤の「OVER」「世界が終わる夜」「ALMA」では四家卯大オーケストラがサプライズ登場し、バンドと共演を果たす一幕も。「ALMA」披露前には、ステージのバックに満天の星空のような電飾が輝く。

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「思いが一番乗るのはバラード。星が好きだからかな。透明で深遠で黒くて淋しくて。究極の孤独。あったかくてさみしくて届きそうで届かない。(中略)そんなアフリカで一番美しい星空を見たとき、とてもこわいけど大切なものに気づいた。一番大切なものは愛だと」

 大木がそう告げると、ファン投票で1位に輝いた「ALMA」が壮大なスケールで披露され、会場が大きな感動に包まれる中、本編が終了した。

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