FlowBackがSTYプロデュース曲で体現した、“攻め”のバランス感と海外シーンとの共振

FlowBackのバランス感と海外シーンとの共振

 2016年5月にインディーズ1stシングル『AfterRain』をオリコンウィークリー16位(デイリー4位)に送り込むと、同年9月には『Come A Long Way』でメジャー・デビューした5人組ダンスボーカルグループ、FlowBack。彼らの最新シングル『BOOYAH!』は、近年の日本のボーイズ・グループの楽曲の中でも攻めに攻めた内容でありながら、執筆時点でオリコンデイリーチャートの5位を記録している。

 作詞作曲、振り付け/構成、スタイリング、グッズ制作に至るまでを各メンバーがプロデュースする活動で人気を集めてきたFlowBackの楽曲は、もともとプロダクションや音色に海外のトレンドを意識したものが多く、メジャー後はDigz Inc. Group所属のHIROをサウンドプロデューサーに迎え、ポップ・ミュージックの“エッジ”をより前面に押し出してきた。メジャー・デビュー曲「Come A Long Way」では、当時再評価が著しかった90sテイストのUKガラージに接近すると、同じくHIROが手掛けた2ndシングル表題曲「Heartbreaker」では、ブルーノ・マーズ『24K Magic』とも共振する80年代風ディスコブギーをものにする。カップリングでもThe Weeknd以降のオルタナティブなR&Bを取り入れるなど、その中心はモダンR&Bとクラブ・ミュージックの融合で、こうした楽曲を得意とするHIROとメンバーとのケミストリーが前述のエッジを生んでいた。そして今回の「BOOYAH!」では、EXILEや少女時代、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEを手掛けるDigz Inc. Group所属のSTYとともに“ヒップホップ”へ接近。タイトルに「最高!」を意味するヒップホップ・スラングを冠し、昨今のトレンドを盛り込むことで、さらにエッジの効いた音を手に入れた。

 まず印象的なのは、開始約20秒でJUDAIが<Throw back to 90's(90年代に遡ろう)>と告げて割り込んでくる「BOOYAH!」というコーラスが印象的な90年代ヒップホップR&Bパート。とはいえ、楽曲のサビに当たるこのパートにはLidoの「Money」や「Crazy」などに近いDTM特有のエディット感覚が追加され、独特のフューチャー感が生まれている。楽曲はそこからガラッと雰囲気を変え、DJ Mustard直系の低音を生かしたシンプルなヒップホップ・ビート、もしくはトラップ的なビートの上でアジアンテイストのシンセが顔を出すエスニックなパートに突入。トラップは2017年に入ってもKehlaniのデビュー作や、2作連続で全米1位を獲得したFutureの新作を筆頭に注目作を数多く生む、現在のUSメインストリームの最大の影響源になっている。また、この「歌サビ」ではじまり「トラップ」に移行する楽曲構成自体も、近年USメインストリームのトップ40に多く見られる展開で、音楽的に「BOOYAH!」のメインとなっているのは基本的にこの2つ。3つ目の要素として、後半のブリッジにトロピカル・ハウスが加えられている。トロピカル・ハウスはジャスティン・ビーバーの「What Do You Mean?」(2015年)を機に多くのポップ・ソングに取り入れられており、昨今は日本のダンス&ボーカル・グループの楽曲に使われることも多い要素のひとつだ。

 つまり「BOOYAH!」は、一見ちぐはぐにも思える3つのパートがブロックを積み上げるようにひとつになって構成されている。そのため「Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→大サビ」といったJ-POP的な構造に比べて全体の統一感やサビの概念といった要素が薄く、これが楽曲の「攻めた」雰囲気を生んでいるのではないだろうか。STYは楽曲提供する三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEとの仕事においても「R.Y.U.S.E.I.」のようなEDMを取り入れたメガヒットから「J.S.B. DREAM」のように前衛的な楽曲までを手掛けているが、この「BOOYAH!」はまさに後者。しかし同時にメンバーの華やかな歌声がポップ・ミュージックとしての華やかさやキャッチーさ、パワフルさを同居させているのがFlowBackらしい。

 そんな楽曲の雰囲気に呼応して、STYをメインに、ラップをJUDAIが担当した歌詞は、何度も挿入される<We the FlowBack in the place to be(意訳すると「FlowBackがやってきたぜ!)>というフレーズそのまま「ライブ」に焦点が当てられている。Aメロでは彼らが結成当初、観客が誰もいないフロアでパフォーマンスをした思い出や、当時の葛藤や悔しさを赤裸々に描写。サビでは多くのファンと共にする現在のライブの熱量が表現されている。つまりこの「BOOYAH!」は、グループのこれまでをサポートしてくれたファンへの感謝を歌った楽曲でもあるのだろう。MVでメンバーが手を掲げる印象的な振りも「やったー!」とガッツポーズや万歳を伴うような「BOOYAH!」という単語の雰囲気にリンクしていて、音楽性や歌詞、振り付けまですべてが連動して、過去曲以上にフロアで会場一体となってハンズアップする姿や、ライブでの圧倒的なエネルギーを連想させる。

 近年日本のダンス&ボーカル・グループの楽曲には、様々なバリエーションを持ったものが増えている。「BOOYAH!」は中でも「エッジ」と「ポップ」のバランスを大切に、J-POPのフォーマットを痛快に逸脱してきた彼らならではのキラー・チューン。グルーヴィーなファンクに接近したカップリング曲「Showstoppaz」とのコントラストも、グループの音楽性の幅広さを伝えている。5月31日にはキャリア初となる1stフルアルバム『VERSUS』の発売を控えるFlowBack。彼らがアルバムでどんな表情を見せてくれるのかも楽しみだ。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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FlowBack『BOOYAH!』(初回生産限定盤)
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FlowBack『BOOYAH!』(通常盤)

■リリース情報
初回限定生産盤(CD+DVD):¥1,600(税込)
<CD収録曲>
1. BOOYAH!
2. Showstoppaz
<DVD収録内容>
1. Heartbreaker Music Video
2. Heartbreaker Music Video Dance Full Version
3. FlowBack Behind The Scenes Vol.3

通常盤(CDのみ):¥1,100(税込)
<収録曲>
1. BOOYAH!
2. Showstoppaz
3. BOOYAH! -Instrumental-

『VERSUS』
発売:2017年5月31日(水)
初回限定生産盤A(CD+DVD)
価格:¥3,700(税込)
初回生産限定盤B(CD+DVD)
価格:¥3,700(税込)
通常盤(CDのみ)
価格:¥2,600(税込)

<収録予定曲>(初回生産限定盤/通常盤共通/全12曲収録)
「AfterRain」※2016年5月発売インティーズ1stシングル
「Come A Long Way」※2016年9月発売メジャーデビューシングル
「Heartbreaker」※2016年12月2ndシングル
「BOOYAH!」※2017年3月発売3rdシングル
上記、既発シングル4曲に加え、アルバム新曲8曲、全12曲収録予定。

<DVD収録>(約30分収録)
初回生産限定盤A
・ミュージックビデオ+ライブ映像予定
初回生産限定盤B
・撮り下ろし企画映像収録予定

■ライブ情報
『FlowBackワンマンライブ』
2017年7月9日(日)
会場:赤坂BLITZ 
開場:16:00
開演:17:00
料金:¥4,000(ドリンク代別)
席種:1Fスタンディング/2F指定
問合:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 (平日12:00〜18:00)
一般発売日:2017年5月27日(土)
※先行予約や詳細はオフィシャルサイトにて

■イベント情報
『FlowBack3rdシングル「BOOYAH!」発売記念イベント』
3月25日(土)【1】16:00~@東京都:HMV&BOOKS TOKYO
3月26日(日)【1】18:00~@東京都:某所 スペシャルイベント実施 ※詳細後日解禁
※ご来場の際は必ずオフィシャルサイトの注意事項を確認

FlowBackオフィシャルサイト

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