SPECIAL OTHERS、10年間の歩みとこれから 山田将司、菅原卓郎、RIP SLYME迎えた一夜

スペアザが歩んできた10年間の重み

 「10年も続くとは思わなかった」、芹澤“REMI”優真(Key)はMCでそう話す。SPECIAL OTHERSは、昨年の6月でメジャーデビュー10周年を迎えた。2015年にリリースした6枚目のアルバム『WINDOW』のDVDに、『デビュー10年のキセキ ~大車輪~』を収録していたり、そのアルバムツアーに“10th Anniversary”と冠されていたりと、10周年イヤーの助走はあった。

 今回、6月9日にZepp Tokyoで開催した『10th Anniversary BEST盤TOUR QUTIMA Ver.22』は、10周年イヤーの締め括りであり、3月にリリースしたコラボ作品集『SPECIAL OTHERS II』、そしてあくまで“初回限定盤の付属”として届けられた『SPECIAL OTHERS BEST』のツアーである。バンドのこれまでの軌跡を確かめると共に、山田将司(THE BACK HORN)と菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、RIP SLYMEを迎えた特別な一夜となった。

 スペアザのワンマンライブは、休憩を挟んだ「1st SET」と「2nd SET」に分かれる。前半のセットリストは、『WINDOW』の楽曲を中心に構成し、後半は「PB」「STAY」「Laurentech」「IDOL」といったイントロで会場に歓声が溢れるキラーチューン4曲が披露された。といっても、セットリスト全曲が『SPECIAL OTHERS BEST』に収録された楽曲。その全てがキラーチューンに変わりはない。

 おもむろにステージに現れた4人は、各々が自由に音色を奏でていく。それがやがてメロディーに変わり、鮮やかなジャムセッションから1曲目の「LIGHT」へ。芹澤の会場を包むような温かなキーボードのサウンド、又吉“SEGUN”優也(Ba)のエッジが効いたベース、柳下“DAYO”武史(G)のギターは歌うようにメロディアスに、宮原“TOYIN”良太(Dr)のドラムは躍動感たっぷりにビートを刻む。「Good Luck」では、又吉がウッドベースに持ち替え、宮原と芹澤による伸びやかな歌声が会場に響く。

 スペアザほど、万人に愛されているバンドもそうそういないと思う。これまで、イベントやフェスなど様々な場面でスペアザを観て来たが、どんな時でもビールを片手にゆらりと揺れながら、音に身を委ねている多くの観客の姿を目にすることができる。当然、この日も会場にはそんなファンがごまんといた。休憩を挟んで、2nd SET。「PB」での幕開けは、ファンのボルテージを一気に上げた。スペアザの音楽は自由だ。それは、会場のタイミングにとどまらない歓声が証明している。柳下のギターが主旋律を奏でながらも、4人それぞれが主役としての顔を持つ。「STAY」「Laurentech」といった楽曲では、時おり芹澤によるジャズ調のアレンジ、柳下の今にも火を吹くようなギターが鳴る。緩急がありながら、ラストで最高潮のカタルシスをもたらしてくれるのがスペアザのサウンドの一つの形と言える。本編ラストを飾った「IDOL」は、10年前にリリースしたメジャーデビューアルバムのリード曲。どこかノスタルジックでありながら、熱のこもった演奏は、『WINDOW』にも通ずるものがある。今や、スペアザはインストバンドとして、確固たる位置を獲得しているが、それは一貫して変わらぬサウンドを鳴らし続け、リスナーに応えてきた賜物でもある。

 ツアーの初日、Yokohama Bay Hall公演には浜野謙太(在日ファンク)がサプライズゲストとして登場し、コラボ曲「かませ犬」を披露していたが、この日は山田と菅原とのコラボ曲「マイルストーン」、RIP SLYMEを迎え入れての「始まりはQ(9)CUE」をパフォーマンスした。「マイルストーン」では、2人の尖った声色とスペアザのバンドサウンドが絶妙な塩梅で混ざり合う。ヒップホップとインストバンドが組み合わさった「始まりはQ(9)CUE」では、この日一番とも言えるグルーブが会場に生まれた。宮原は、山田と菅原を「尊敬する2人のボーカリスト」、RIP SLYMEを「人生の教科書みたいな存在」と讃えステージに呼び寄せていたが、『SPECIAL OTHERS II』はそんな憧れと様々な縁によって生まれた作品なのだ。

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