KREVAが出演者たちと作り上げた最高の“居場所” 『908 FESTIVAL 2017』レポ

『908 FESTIVAL 2017』レポート

 KREVA主催のイベント『908 FESTIVAL 2017』の東京公演が9月8日、日本武道館で行われた。今年で6年目を迎えた『908 FESTIVAL』は大阪城ホール、日本武道館で開催。KREVAにとってはKICK THE CAN CREW主催の『復活祭』に続く2日連続の武道館のステージとなった。三浦大知、MIYAVI、久保田利伸、AKLO、絢香など圧倒的なスキルを備えたアーティストが登場し、この日限りの超レアな共演が数多く実現した。


 開演時間の18時30分ジャスト、ステージの中央に設定された階段の上にKREVAと三浦大知が登場。2人揃って“K”サインを掲げるとオープニングナンバー「全速力 feat.三浦大知」を披露する。スピード感溢れるトラックとともに三浦のボーカル、KREVAのラップが絡み合い、会場のテンションは一気に上がる。さらに2人は客席に降りてアリーナを1周。ステージとフロアの曲をグッと近づけてみせる。

 その後もインターバルを開けることなく、次々とゲストアーティストが登場、圧巻のステージが繰り広げられる。まずはMIYAVI。タッピングとピックを使い分けながらパーカッシブかつメロディアスなプレイを炸裂させ、「STRONG」ではKREVAのラップ、「Dancing With My Fingers」では三浦のボーカル/ダンスと刺激的なコラボレーションを実現。続く久保田利伸は「M☆A☆G☆I☆C」をKREVAとともに歌い上げ、武道館を濃密なグルーブで包み込む。さらに「『M☆A☆G☆I☆C』はサンプリングで作ってるんだけど、そこにいる柿崎さん(柿崎洋一郎/Key)と、アニキのツアーに参加してるシンガーのYURIさんが歌ってるフレーズを使っていて。それはアニキが“そうしたらいいよ”って言ってくれたんだよね。KICK THE CAN CREWの新曲『千%』も同じ方法で作ってるから、アニキがいなかったら、あの曲できてないかもしれない」(KREVA)というコメントを挟み、「BETWEEN THE SHEETS」へ。久保田が生で歌うR&BクラシックのうえでKREVAが「K.I.S.S.」のラップを乗せる。それはヒップホップというアートフォームの起源を感じさせてくれるような、きわめて貴重なシーンだった。80年代を席捲したリズムマシンの名器「TR909」「TR808」の復刻版を使用したビートアレンジも最高だ。


 続いてAKLOのステージへ。ドープなトラックをフィーチャーした「McLaren」で始まり、「Catch Me If You Can feat. KREVA」ではKREVAとともにラップバトルを交わす。さらにJAY'EDを招き入れ、「Different Man」を披露。奥深いブラックネスを含んだこの曲はAKLO×JAY’ED名義でリリースされた1st EP『Sorry...come back later』に収録されたナンバー。現行のUSヒップホップとリンクしたトラックのなかでメロディとラップが有機的に混ざり合うこの曲は、現在の日本の音楽シーンの充実ぶりを象徴していると言っても過言ではない。



 「想い出の向こう側」をAKLO、JAY’ED、KREVAでセッションした後は、ひとりで舞台に残ったKREVAは「昨日からここでハジけてたからさ、いまさら一人になって、寂しくなってきちゃったな」と「くればいいのに」を歌い始める。そこに絢香が姿を見せ、ソウルフルな歌声を響かせる。さらに2人は、この日のために作ったという新曲「Glory feat.KREVA」を披露。まさに“絢香節”と呼ぶべきドラマティックなメロディとKREVAの強靭なラップがひとつのなったバラードナンバーだったのだが、“現状を打破し、自分の手で栄光を掴み取りたい”というメッセージを含んだ歌は、絢香とKREVAのそれぞれの軌跡とも重なり、強い感動を生み出した。


 三浦大知、MIYAVI、AKLO、JAY'ED、絢香。ジャンル、音楽性はまったく異なるが、全員に共通しているのは、独自のスタイルと高いテクニック、豊かな表現を兼ね備えているということ。誤解を恐れずに言えば、KREVAはおそらく、彼自身を感動させ、刺激を与えてくれるプロフェッショナルにしか興味がない。彼の基準による“最高のプロフェッショナル”が集結するのが『908 FESTIVAL』の最大の魅力であり、観客は必然的に日本最高峰のパフォーマンスを目の当たりにすることになる。出演者の個性とセンスを存分に活かしながら、イベント全体をシームレスに構成・演出するKREVAの手腕も素晴らしい。

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