TWEEDEES、徐々に変化する“成長”の見せ方 辻林美穂迎えたツアーファイナルをレポート

TWEEDEES、徐々に変化する“成長”の見せ方

「TWEEDEESは僕の成長過程を見せる場でもあるんです。元から作家仕事をやっていたのに、TWEEDEESを始めて、そこに外仕事がフィードバックされて作る曲が変わってきたりして。48歳なのにまだ成長しているんですよ」(参考:クラムボン・ミトとTWEEDEES・沖井礼二が明かす、2人の「距離」と「伝家の宝刀」

 先日、ミト(クラムボン)と沖井礼二の対談を担当した際、TWEEDEESは「清浦夏実の成長過程を微笑ましく見守る」部分に魅力があるという話題になったとき、沖井は上記のように答え、自身の成長過程を見せる場でもあると断言した。9月8日に渋谷・TSUTAYA O-WESTで行なわれた『ショウほど素敵な商売はない〜「à la mode」TOUR2017』は、その言葉に込められた思いを理解するには十分といえる内容だった。

 今回のライブは、TWEEDEESにとって初めてとなる全国ツアーのファイナルであり、全日でオープニングアクトを務めた辻林美穂が最終日もトップバッターとして登場。辻林は、バンド・ふたりの文学のほか、作編曲家としては悠木碧や星野みちるに楽曲を提供し、今クールのアニメ『異世界食堂』(テレビ東京ほか)では劇伴作家を務めるなどマルチに活躍するソロシンガーソングライターだ。

 辻林は、センチメンタルなメロディと歌唱が胸を打つ「真夏のかけら」、テンポの奔放さが矢野顕子を彷彿とさせる「あぶく」などを披露すると、続けてNegicco「愛は光」のカバーで観客の心をバッチリ掴む。沖井・坂和也・原“GEN”秀樹がバックバンドとして登場したあとは、星野みちるへの提供曲「ONE-TIME LOVE」をセルフカバー。豪華な編成で、その役目を存分に果たしてみせた。

 TWEEDEESは過去にもPOLLYANNAやスカートなど、清浦と年代も近く、沖井やその周辺の音楽に影響を受けてきたアーティストと共演し、新たな才能のフックアップに一役買っているが、今回の辻林はツアーをともにしたからか、先輩後輩の間柄というよりは“仲間”のような触れ合いも目立つ。相変わらず口を開けば止まらなくなる沖井のトークを、辻林がいとも容易く流せるようになったのも、この旅でのコミュニケーションがあってのことだろう。

 辻林の出番が終わり、TWEEDEESのセッティングに入るが、ステージにはトイピアノにアップライトベースと、これまでのライブで見たことのない楽器が2つほど用意されていたのに驚いた。さらに、2月の『Happy Birthday TWEEDEES Vol.2』で見た4人編成初ライブでは、沖井がトレードマークである赤いリッケンバッカーをほぼ使用せず、フェンダーのプレシジョンベースをプレイし、新たなTWEEDEESとしての音像を生み出してみせたのだが、そのプレベの姿はどこにもなかった。

 そんな光景に、約半年前とは全く違った姿が見れるのだろうとワクワクしていると、登場したTWEEDEESの2人に原と坂を加えた4人は「PHILLIP」「a la mode」「STRIKERS」と次々にキラーチューンを演奏する。これもまた、2枚のフルアルバムと1枚のミニアルバムをリリースし、楽曲にも幅が出てきたからこそ作れる展開だ。赤いリッケンに戻した沖井のベースプレイも、やはりしっくり来る。

「次の曲は『a la mode』に入っている曲です」

 という意味合いを3分ほどかけながら話す沖井とそれにツッコむ清浦。それでも喋りを止めない沖井と「歌わせてください」と呆れる清浦。まだ引き下がる沖井を「うるせえ、やるぞ!」と一喝する清浦。2人の関係性の変化もTWEEDEESの楽しみ方の一つだが、もはやMCの主導権は完全に清浦にあるといっていい。適度に遊ばせながら締めるところは締める姿に、そんなことを思わずにはいられなかった。

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