ULTRAはなぜ世界展開に成功した? 音楽フェスを広げるテクノロジーの役割

『ULTRA』が示す、フェスの新たな選択肢

 9月16日、17日、18日にお台場 ULTRA JAPAN特設会場で開催されたEDMフェスティバル『ULTRA JAPAN』。4度目の開催となる今年もThe Chainsmokers、Underworld、banvox、中田ヤスタカ、Steve Aokiなど国内外のDJやアーティストが並ぶ豪華なラインナップとなり、ライブのみならず、思い思いのフェスファッションを楽しむ観客も多く見られた。日本国内での音楽フェスといえば『FUJI ROCK FESTIVAL』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』といったロックフェスティバルのイメージが強い。しかし、アメリカ、南アフリカ、スペイン、中国、シンガポールなど世界各地で開催される『ULTRA MUSIC FESTIVAL(以下:ウルトラ)』の存在は音楽フェスの今後を考える際に無視できないものとなっている。そこで海外の動向にも詳しいデジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に、ウルトラの現在について話を聞いた。

「ウルトラは、世界各地で行われる関連イベント全部を合わせてウルトラだというフェス体験の共有に対する考え方が面白いですよね。他のフェスと違って一つの場所に固定することなく、どんどんグローバルにリーチしていくというのが彼らの目標であり、ローカライズの仕方なんです。例えば、非常に大掛かりなメインステージのセットは地元の制作チームと本国・マイアミのクリエイティブチームが一緒に現地で作るというスタイルで、根本の考え方やコンセプトを本国が決めて、世界のチームと共有しているんです。だから統一性のあるデザインで、どこの国でウルトラを観てもちゃんとウルトラの体験が共有できるのです。フェスを国際展開していく時に一番理にかなっている方法であり、新しいフェスの作り方かもしれません」

 邦楽のロックフェスではあまり見られないVIP/VVIPチケット(優先的なサービスが受けられる高額チケット)があるほか、日本のフェスより積極的にライブ配信を行なっているのもウルトラをはじめとする海外フェスの特徴だ。

「フェスやライブは会場の動員数に合わせたチケット枚数しか販売できないため、売り切れたらそれ以上の人に見てもらえない。それを打破する一つの方法がライブ配信です。オンラインでもフェスに参加してもらうためのツールであり、配信を見た人がTwitterに投稿したりしてハッシュタグがトレンドに入ることもあります。SNSで話題になることでブランド力、訴求力を際立たせ、さらに人が集まったり、話題になるフェスが増えている気はしますね。特にウルトラはYouTube、LINE LIVEなどで積極的にライブ配信を行うことで、どこからでも観れる環境を作っている。リーチを広げて、会場に行けない人もフェスに参加している、という繋がりの体験を作りたいという思いを感じます」

 ライブ配信はYouTube、LINE LIVEやInstagramのライブ機能などが主流となっている一方で、近年は新たな配信アプリが増加しているとジェイ氏は語る。

「例えばDMM.comが配信開始した投げ銭ができる『LIVE commune』はアーティスト向けに面白いアプリです。こういったライブ配信アプリは今後、小中規模のライブフェスをより広くリーチさせていくときに活用されていくのではないでしょうか。ほかにも、まだ知名度の低いミュージシャンなどがYouTubeなどでライブ配信を行なうと競争が激しくて人を集めるのが大変だと思いますが、アプリだともっとダイレクトに人に届けられるので、大きなビジネスにするためのスタートポイントの一つになりそうです」

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