SHE’Sが発揮した、ロックバンドとしての存在感 ストリングス迎えた初のホールツアーを観て

SHE’S、初のホールツアーを観て

 SHE’Sが初のホールツアー『SHE’S Hall Tour 2017 with Strings 〜after awakening〜』を開催。9月29、30日東京・草月ホール、10月13日愛知・名古屋市芸術創造センター、14日大阪・立命館いばらきフューチャープラザ グランドホールの3都市4公演をまわった本ツアーで彼らは、ストリングスを迎えたスペシャル編成でのパフォーマンスを披露した。

 ホール会場、ストリングスとのコラボレーションーー壮大なスケールの楽曲を多くレパートリーに持つ彼らの音楽に親しんできた者からすれば、まさに待望のシチュエーションである。9月29日東京公演では、会場とストリングスの効果により拡張された、SHE’Sのバンドとしての持ち味を存分に堪能することができた。

 まず印象的だったのは、ホールならではの光による演出。突き抜けるような白、鮮やかでビビッドな色から攻撃的で激しい色、さらには暗闇に差す一筋の光まで、楽曲の世界観を彩る光の演出がふんだんに盛り込まれていた。その色彩の豊富さは、SHE’Sが奏でるサウンドバリエーションの豊かさにも直結している。

 バイオリン×2、ビオラ、チェロの高らかなストリングスの調べからはじまり、オープニングを飾った「Over You」や「Un-sciense」はオリジナルのイメージを踏襲するかたちで披露。生楽器の音で旋律が鳴らされる楽曲はよりいきいきと聞こえた。また、この日はSHE’Sのロックバンドとしての存在感をより強く感じることができるライブでもあった。「Someone New」のようなエモーショナルなサウンドから「Beautiful Day」「In the Middle」「グッド・ウェディング」のような温もりあるポップサウンドまで、どのような曲調でも服部栞汰(Gt)、広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)の重厚なサウンドがしっかりと演奏を支える。中でも服部の渋みのあるギターソロは度々披露され、SHE’Sのサウンドの個性を生み出す重要な役割を果たしていた。ロックバンドとしての礎が築かれているからこそ、井上竜馬(Vo)のピアノの旋律が活きてくるのだろう。

 ストリングスメンバーを再び迎えて披露されたソリッドな「Isolation」は、この日の一つのハイライトでもあった。ドラマチックな楽曲イメージが洗練され、一気にはりつめた空気を作り出す。その後の「信じた光」は激しさと繊細さを兼ね備えた一曲。緩急がつくことで井上の歌声の美しさ、優しく力強く歌い分けるボーカルの表現力が一層際立った。ピアノのインタールードから始まった「Night Owl」、続く「Don’t Let Me Down」「Long Goodbye」などでは、洋楽さながらの壮大なスケールを描き出す。特に「Ghost」では、彼らのエモーショナルな側面がストリングスとバンドのグルーヴにより最大限に発揮されていた。

 終盤は、ライブの定番曲「Voice」からスタート。メンバーのコーラスワークも響き、会場が幸福感に包まれる中、「Freedom」「遠くまで」へ。途中、井上がハンドマイクで歌う場面もあり、声と音の粒が弾けるように飛んでいく。本編最後は「aru hikari」。井上がこの曲を作るに至ったエピソードや、あせらずゆっくり光を探していくという意思を伝え、ピアノを弾きながらゆっくりと歌いはじめる。最後は井上のぎゅっと結んだ手の合図でバンドとストリングスの演奏がぴたりと止まるという粋な演出で幕を下ろした。

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