島爺、2017年の集大成を見せた初の全国ツアー 川崎CLUB CITTA’公演をレポート

島爺、2017年の集大成を見せた初の全国ツアー

 島爺が、10月27日に川崎CLUB CITTA’にて自身初となる全国ツアー『孫を訪ねて82万里〜冥土 in Japan〜』を行った。

 9月からスタートしたツアーも、本公演を除けば11月5日の沖縄桜坂セントラル公演を残すのみ。福岡から熊本、大阪、仙台、名古屋、広島、北海道と、着実に経験を重ねてきた島爺のライブは、まさに圧巻の一言だった。


 超満員の”孫”たちを沸かせた1曲目は、nikiによる2ndアルバム『孫ノ手』への書き下ろし曲「チェゲラナ」。和のテイストを織り込みながら、疾走感の溢れるサウンドで耳を奪うロックチューンから、一聴して島爺の好調ぶりが伝わってくる。ギターのヨティ、ベースのMIYA、ドラムのSHINJIと、お馴染みになったバンドメンバーとの連携も円熟味を増し、続く歌い手・島爺の代表曲「ブリキノダンス」で、早くも会場のボルテージは最高潮に達した。「タイトロープドリーマー」、「不毛!」と尖ったロック曲を立て続けに披露し、「しんどい!」と一言漏らした島爺に、観客からは恒例の「大丈夫〜?」の声。激しく熱量の高いパフォーマンスと、曲間に流れる緩やかな時間のギャップが、島爺のライブの大きな魅力だ。「歌ってみた」でも人気を博している「人造人間ナマミマン」、「R.O.C.K.E.T」と難曲が続くが、初ライブ『冥土ノ宴』(6月・赤坂BLITZ)で少々見られたような息切れは全くなく、島爺は”82歳”にして大きな進化を遂げた、艶やかで力強い歌声を響かせた。


 多くのクリエイターによる、バリエーション豊かな楽曲を次々と自分のものにしてきた島爺のライブは、まさに緩急自在だ。サビのファルセットが切なく響く「シャルル」、大人の色気漂う「真夜中の微笑み」を弾き語りで披露した島爺は、「ゆっくり休めたな。騒ぐかあ!」と観客を煽り、エキゾチックでスピーディなサウンドでイントロから耳を奪う「バケモノダンスフロア」、デジタルロック「エイリアンエイリアン」と、踊れるロック曲で会場を揺らした。『孫の手』の制作期間に出会い、当時の心境と見事にシンクロしたという名曲「川沿い」を歌い上げれば、数々のアーティストがカバーしてきた和ロック「天樂」をオリジナル曲のように聞かせ、皮肉の効いた洒脱なロック「現代ササクレ学入門」でカタルシスのあるステージを展開する。もはや盟友と言えるナナホシ管弦楽団を呼び込んで披露するのは、もちろんアニメ『デジモンユニバースアプリモンスターズ』の主題歌としてヒットを記録した「ガッチェン!」だ。「後半にやる曲ちゃうやろ!」(ナナホシ)、「いや、お前は1曲目やないか!」と、掛け合いも楽しく、息つく間もなく披露された、1stアルバム『冥土ノ土産』への書き下ろし曲「OVERRIDE」まで、駆け抜けるようにハイクオリティなパフォーマンスを見せつけた。やはり尖った楽曲のオンパレードで、本稿を読むだけでも、そのめまぐるしさは伝わるだろう。しかし、それが決して駆け足で流れていくものではなく、観客の胸にしっかりと届いているのは、”おじいちゃん””お孫さん”と、常に気遣いあう島爺とファンの関係性によるところが大きいだろう。動画や生放送、そして生のステージを通じて深い信頼関係を築き、かつ新しいファンを排除しない緩やかなムードが生まれているのは、奇跡的なことに思える。


 本編のラストを飾ったのは、『孫ノ手』の1曲目としてアルバムを勢いづけた「なんで生きてんだろうってすげえ思うんだ」。島爺はそれに先立つMCで、「小学校低学年の頃、意味もなく全力で電柱柱にぶつかる、という謎の遊びが流行った」というエピソードで観客を笑わせつつ、「そんな遊びをしていたのは、理由もなくただ、楽しそうだと思ったから。年を重ねるにつれて、理由を探すことが増えてしまうけれど、『だからできない』とか、『やっても無駄だ』と自分を納得させるための言い訳を求めていることが多い。みんなも何か好きなこと、やりたいことがあるなら、理由なんて探さなくていいから、最初の熱だけをしっかり捕まえてください。大丈夫やから」と心からのメッセージを伝え、刺激的な言葉を並べながら、ある種の”許し”を与えてくれる名曲を歌い上げた。

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