『R-Festa Next』に見た、新世代のHIPHOP/RAPとポップスカルチャーの接点

『R-Festa Next』第2回レポート

 2006年にスタートしたヒップホップやR&B、レゲエをプログラムの中心としたライブイベント『R-Festa』が、5年間の休止期間を経て、『R-Festa Next』として再スタートしたのが今年5月。その2回目となる『R-Festa Next vol.2』が、11月17日に代官山SPACE ODDにて行われた。

 『R-Festa』といえば、再始動前に行われていた構成を振り返ると、その時々の「ポップスシーンに訴求力のあるヒップホップやレゲエアーティスト」が中心となっていた。例えば2011年のアーティストを一部抜粋してみると「童子-T、青山テルマ、JAMOSA、加藤ミリヤ、清水翔太、MIHIRO~マイロ~、KEN THE 390、Spontania」といったアーティストが登場しており(ここにKGDRとダースレイダーもいたのが興味深いが)、メジャーシーンにおける「シンガー+MC楽曲の流行(の残り香)」も含め、「J-POPとしてのラップ/R&B」というアプローチを、当時活動の中心にしていたアーティストが多く顔を揃えていた。

 その流れで言えば、今回の『R-Festa Next vol.2』に登場したアーティストも、いわゆる「ゴリゴリのハードコア」や「煙たいアンダーグラウンド」といったアーティスト性とは異なった音楽的キャラクターを持っており、「ポップシーンに訴求力を持つ/親和性を持つ」という部分では、これまでと通底しているだろう。しかし今回登場したアーティストたちは、「よりフラットに」ポップスとの親和性を持っていると感じた。それは、特に若い世代がヒップホップやR&Bの「身体性/ノリ」を幼い頃より感覚的に掴んでいることが影響しているからではないか。

 体感ではあるが、いまの20代中盤周辺から下の世代、つまり今回のイベントに登場した世代で、音楽を表現方法として選ぶ人間は、「格好いいラップ」の感覚を、自然に身につけている場合が多い。それは元々ヒップホップ/ラップのリスナーでなくても、である。

 いわゆるJ-POPやアイドル楽曲の中で、ラップがモチーフになることは昨今全く珍しくない。10年ほど前まではラップがポップスの中でモチーフになる場合、「ヒップホップ=チェケラッチョ」といった類型化された表現、つまり飛び道具的な使い方であったり、他との差異性を表すために使われる場合が多かった。しかし、今はポップスの中にシームレスにラップが入り込み、アーティストたちもそれをスムーズに「格好良く」聴かせることができる。それはこれまでの日本語ラップがシーン全体としてスキルを向上させてきたことや、KICK THE CAN CREWやRIP SLYMEがポップシーンで活躍したことで蒔かれた種の結果であるだろう。

 そういった流れによって、ポップスの中に「格好いいラップ」があることが普遍的になったが故に、若いリスナー、多くの人間が「格好いいラップ」を体感として身に付けたり感覚として持つことになり、ポップでありながら格好いいラップというアプローチを、「無理に頑張らなくても」できるようになった。

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 それは今回でいえば、いわば「バンド上がり」のあっこゴリラや、「(映画)『Tokyo Tribe』を観に行ったんですよ。それでめっちゃ盛り上がって『ウチらもラップできるでしょ! やろうよ!』みたいな感じ(レイチェル)」「思い出作りにと思って(鈴木真海子)」(上記括弧内発言は https://spincoaster.com/interview-chelmico より引用)と話すchelmicoのような、いわゆる「ヒップホップ生まれヒップホップ育ち」ではないアーティストたちが、シーンの内外から大きな注目を集め、今回のイベントではその2組がトリ前と大トリを務めていることにも繋がるだろう。

 彼女たちのラップは、まず聴感として「格好いい」。もちろん天性の部分もあるだろうが、キャリアとしては短いにもかかわらず、ビートに対してスムーズにラップをアプローチさせ、押韻といったマナーもそこに込めることができる。しかも、そういったマナーを自然に体得しているようにも感じる。それは、上記のような格好いいヒップホップが巷に一般的に流れ、それが身体の根本にあることも、影響しているのではないだろうか。

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 また、オープニングDJはDJ YON YON、そしてそれに続いて登場したアクトがPRANKROOM、ASOBOiSM、RIRIであったのも興味深い。招聘のコンセプトにも依ることだが、それでも未だに男性優位な音楽シーンの中で、今回の登場アーティストの半数弱が女性アーティストであり、しかもハナとトリも女性が務めるという事実には、大きなインパクトを感じさせられたし、フィメールラップがこれまで以上に大きな潮流になり、ハナとトリを務めるに値する「説得力」を持っているという証左であると思う。

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 それ以外にも、曽我部恵一の手がける<ROSE RECORDS>に所属するMGF、Tokyo Health Clubの手がけるレーベル<OMAKE CLUB>からのリリースを持つJABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBが、非常にタフなライブを見せていたのも今回の発見だった。スタンス的には「文系」と見られがちな両者が、ヒップホップ/ラップというアートフォームのどういった部分に興味を憶えているのかが垣間見えるようだった。

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