DEAN FUJIOKAが音楽活動で表現する“グローカルなセンス”とは 節目の楽曲から紐解く

DEAN FUJIOKAが音楽で表現する“グローカル”

 DEAN FUJIOKAといえば俳優業を思い浮かべる人は多いだろう。しかし、アジアを股にかけて活躍するDEANがデビューを掴んだきっかけは2004年の香港、クラブに飛び入りしてラップをしたことだった。

 日本でのブレイクのきっかけは、2015年に連続テレビ小説『あさが来た』(NHK総合)で、五代友厚役を演じたことだ。実は、筆者はその2年前に彼を取材したことがある。その際に印象的だったのは、自らのアイデンティティーである音楽を形にするために、2008年から制作をスタートしたという日本語〜英語〜中国語が織り混ざったアルバム作品『Cycle』の存在だ。

DEAN FUJIOKA 「My Dimension」 Music Video

 2013年、本人からデモ音源として頂いたアルバム作品『Cycle』に音楽的センスの新しさを感じ、当時、よく聴いていたことを思い出す。本作の収録曲は、実は今でもDEANのライブの主翼を担う傑作ばかりだ。アルバムに収録された超絶アッパーなガレージロック「Banana Muffin Blues」の高揚感は、インドネシアのダンスミュージックであるファンコットからの影響という話にも驚かされた。

 その後、ターニングポイントとなったのはTVアニメ『ユーリ!!! on ICE』オープニングテーマとなった『History Maker』だろう。同作の劇伴を手掛ける梅林太郎・松司馬拓とコライト(共作)し、自ら英詞で作詞したナンバーは日本でのヒットを超え、世界中のYouTubeでカバーがアップされるなど、思わぬ展開を見せている。ロックと上品なEDMが掛け合わされた壮大な世界観を解き放つ本作は、彼のライブにおいてもアンセムとなっている。

「History Maker」 DEAN FUJIOKA<TVアニメ「ユーリ!!! on ICE」オープニングテーマ>

 ここで注目したいのが、DEANによるグローカル(グローバル×ローカル)なダンスミュージックを捉えるアンテナの高さだ。テレビ番組でよくある事前アンケートでは、ゆるふわギャングやDAOKOの名前をフェイバリットにあげる音楽好きであり、世界各国の音楽に詳しい一面を持っているが、取り上げられがちな“食へのこだわり”に比べ、実はメディアではあまりフィーチャーされていない。

「現在進行形では、EDMのサブ・ジャンルも好きだし、チキチキ鳴ってるトラップ・ビートに乗っているヒップホップもチェックし続けてます。あと、最近だと、YUC’eがいいですよね。日本のクリエイターという意味ではインターナショナルな流行とは違う、別の進化を遂げていますね。ガラパゴスゆえに海外からも注目されていると思います。音楽ネタは、スタッフとの雑談やiTunesやYouTubeで知ったり、俳優の仕事をやっているおかげで、自分では選択しないようなロケーションから出会える情報から広がってます」。

 思えば2014年、恵比寿NOSでオールナイトで行われた音楽イベントで、バンドメンバーに盟友であるDJ BAKUとmabanuaを迎えるなど、コアな音楽ファンをも唸らす一面を持っているのがDEANだ。

 DEANは今年の12月20日、2nd EP『Let it snow!』をリリースした。タイトルチューン「Let it snow!」は、ドラマ『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ系)主題歌だ。80年代の邦楽ポップロックからインスパイアを受けたという、ギミッカブルなサックスの音色を取り入れるセンスが、海外でいうPhoenixの「J-Boy」を彷彿とさせるなど驚かされた。

「今回、フューチャー・ベースだけでなくタイムレス感が欲しいなとサウンドにもこだわりました。そこで、子どもの時に感じた空気感を表現したくてサックスを取り入れました。Phoenixなど海外のアーティストが日本の80’sの音使いに興味を持ってサンプリングしてたりするじゃないですか? あの感覚を、MIDIコントローラーで出してみたかったんです。“冬のテーマソングになったらいいな”と思って歌詞を書きました」

 Phoenixの「J-Boy」とは、“タイトルもリンクする浜田省吾の1986年のヒット曲「J.BOY」をサンプリングしたのでは?”と音楽ファンの間で盛り上がったネタだ。それをDJ的な逆輸入感覚で“80’s風サックス”というエッセンスのみ抽出するDEANによるひねりの効いたセンスがユニークだ。優しく包み込むような歌声、たゆたうような鈴の音。雪が降り積もっていく景色が眼に浮かぶかのようなエレクトロビートが牽引するウインターロマンスソングに仕上がっている。

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